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日銀、苦肉の「市場機能重視」路線

2013年から大量の国債や上場投資信託(ETF)の買い入れで存在感を示してきた日銀が市場重視の路線にカジを切り始めた。債券市場では最大のイベントだった日銀の国債買い入れから注目をそらそうと躍起になり、ETFの買い入れもほとんど実施しなくなった。日銀の姿勢の変化は緩和長期化が避けられないことの裏返しでもある。

日銀が6月29日に公表した「当面の長期国債等の買入れの運営について」という資料に注目が集まっている。2014年10月以降、毎月末に発表してきた翌月の国債買い入れの金額(通称オペ紙)を、四半期ごとに改めるという内容だ。

日銀は3月に金融政策の点検を実施して以降、急速に市場への関与を弱めている。株式市場では年間数兆円のペースで購入してきたETFが4~6月には2カ月間購入ゼロが続いた。債券市場でも買入額こそゼロではないものの、注目度が高いオペ紙の公表回数を減らす。

黒田東彦総裁は長期金利の変動幅を広げた3月以降、記者会見で「日銀が意図的に長期金利を変動させるのではなく、経済・物価情勢に応じて(プラスマイナス0.25%の)範囲内で変動することを想定している」と繰り返してきた。日銀幹部も「市場における日銀のプレゼンス(存在感)を下げる」とオペ紙の公表頻度下げの狙いを語る。

13年4月に導入した異次元緩和で日銀は、特に債券市場でその存在感を高めてきた。異次元緩和開始時は年50兆円、14年10月の「ハロウィーン緩和」以降は年80兆円のペースで国債を買い入れることで市場に大量のマネーを供給。その結果、銘柄によっては日銀の保有率が9割に迫る国債もある。

日銀は相場観に関係なく、決められた日に決められた金額を淡々と買い入れてきたため、その日の株価や経済情勢などファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)は意味がなくなり、日銀がいつ、いくら国債を買い入れ、入札に基づく買い入れ価格が市場実勢と比べて高いか低いかが債券市場を規定してきた。

日銀の債券市場支配の象徴が月末の「オペ紙」公表だった。日銀の今回の決定は、四半期末に翌月以降の購入額を示した上で基本的に購入額を3カ月間据え置くことで、市場の金利が日銀による需給ではなくファンダメンタルズを反映して動くようにしたいとの狙いが込められている。

ただ債券市場からは「国債の6割以上を購入している巨大プレーヤーでありながら自らの行動への関心を遠ざけたいという、ある意味で矛盾した行動にみえる」(SMBC日興証券の森田長太郎氏)との指摘もある。長期金利を0%近辺に誘導しながら、範囲内でファンダメンタルズに沿って金利が動くと期待する日銀や黒田総裁の矛盾を指摘する声も多い。

短期決戦のはずだった異次元緩和は開始から8年が過ぎた。自らの存在感を薄めることで市場機能の発揮を促し、緩和の持続性を高めようとする姿勢には、日銀が能動的にやれることはほぼ残っていないという苦肉の実情がにじんでいる。

(佐伯遼)

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