/

2大証券トップ、金融の役割展望

金融ニッポン トップ・シンポジウム詳報

3メガバンクと2大証券のトップが金融の役割を議論する「金融ニッポン」トップ・シンポジウム(日本経済新聞社主催)が4日、開かれた。野村ホールディングス大和証券グループ本社の2社のトップが金融が果たすべき役割について講演した。また、3メガバンクと2大証券のトップが日銀による大規模緩和の評価や足元の金融市場の混迷についても議論した。

野村ホールディングス・奥田健太郎グループCEO
「気候変動に関心 投資拡大」

脱炭素への取り組みは、金融が新しい価値を創出してきたものだ。世界持続的投資連合(GSIA)によると、世界におけるサステナブルファイナンスの投資残高は2020年時点で約35兆㌦(約5200兆円)。運用資産の36%程度を占めるまでになっている。気候変動や人権問題に対する関心の高まりから、投資の拡大は今後も続くだろう。

幅広い産業が脱炭素社会へ円滑に移行できるようにするためのトランジションファイナンスも大きな潮流だ。50年までに社会の脱炭素化を実現しようとすれば、実に122兆㌦の資金が必要だといわれている。一歩ずつ豊かな未来を創っていくところに金融業の存在意義がある。社会課題を解決するため、金融は非常に大きな役割を担っている。

おくだ・けんたろう
1987年(昭62年)慶大経卒、野村証券入社。20年4月から現職。投資銀行が長く、とりわけ通信や総合商社の幹部とも親交が深い。埼玉県出身。58歳

過去10年間にわたり、金融における大きな変化はデジタルの進歩によってもたらされてきた。そしてこれからの10年間で人工知能(AI)やブロックチェーン(分散型台帳)といった新技術により、こうした変化はさらに大きくなる可能性がある。

新たな価値を提供するためにもデジタルの活用は不可欠で、当社も新会社をスイスに設立したばかりだ。日本の会社だって取り組みが遅れているわけではない。思い切っていろいろなことをやってみたい。パラダイムシフトの渦中にあるからこそ、金融の未来には大きな可能性がある。

成人年齢の引き下げや人生100年時代の到来を背景に金融経済教育の必要性はますます高まっている。金融リテラシーの向上は資産形成や生活水準に寄与し、健全な資本市場や適切な資金循環につながっていく。地域金融機関とも連携しながら教育の充実に貢献していきたい。

現在最も注目しているのは米市場の動向だ。政策金利の引き上げが続く米国では、年内から来年にかけて景気の過熱感が弱まってくる過程にある。マーケットがどう動くのか、インフレ率の水準と合わせて注視している。

大和証券グループ本社・中田誠司社長
ファンドラップ、貯蓄の受け皿」

人生100年時代の備えとして将来に向けて資産価値を守る必要性は高まってきている。貯蓄から投資への流れをつくっていく上でも(まとまった資金の運用をプロに任せる)ファンドラップという商品が最適だと考える。

日本の個人金融資産2000兆円のうち5割超の約1100兆円が現預金として滞留している。米国や欧州と比較しても非常に高い水準にある。一方、有価証券への投資の割合は他国と比べて圧倒的に少なく、個人のコア資産は守りの運用が中心だ。

なかた・せいじ 
1983年(昭58年)早大政経卒、大和証券入社。17年から現職。事業法人部門の経験が長く、東芝やアサヒビールを担当した。東京都出身。62歳

個人にはゼロに近い金利よりもよいリターンを得たいが、リスクはできるだけ下げたいという潜在的なニーズが存在する。長期的かつ安定的に運用できる、現預金以外のコア資産の受け皿となるような商品の提供が不可欠だ。ファンドラップはリスクとリターンのバランスを個人のニーズに合わせて調整でき、預金プラスアルファの利回りを追求できる商品だ。ファンドラップが貯蓄から投資へのシフトを促すきっかけになるのではないかと考えている。

足元のインフレや地政学リスクの高まりで変動の大きいマーケット環境も、個人投資家が投資を控える要因となっている。タイプ別に見ると、短期的には株式のように価格推移が低調だった資産がある一方で、コモディティーのように価格が上昇した資産もある。このように各資産の単年のパフォーマンスにばらつきはあるが、長期で見ると各資産を均等に分散投資した場合のパフォーマンスは安定している。投資の成功体験を得ることが肝要で、その手段として国際分散投資というのは最適だ。

現預金から有価証券を通じた資産形成へのシフトではSDGs(持続可能な開発目標)の観点も取り入れるべき重要な要素となる。社会課題解決と経済成長をともに実現できるとした岸田文雄内閣の新しい資本主義の考え方にも沿っている。大和証券グループは金融資本市場の担い手として取り組んでいきたい。

パネル討論 金融政策の転換に備え 市場との対話丁寧に

パネル討論ではこれからの金融再編など将来像についてトップが語ったほか、大規模緩和の評価や足元の金融市場の混迷についても議論した。金融政策を転換する際には、市場との丁寧な対話が必要だとの意見が相次いだ。司会は日本経済新聞社常務取締役の井口哲也が務めた。

安倍晋三政権によるアベノミクスが始まって10年、日銀による大規模な金融緩和もまもなく10年を迎える。10年前と比べると日経平均株価は3倍になった一方で、足元では利上げを進める欧米との政策の違いから円安が進行する一要因となっている。

パネル討論ではいずれ日銀が検討せざるを得なくなる金融政策の転換について活発な議論があった。大和証券グループ本社の中田誠司社長は「インフレ下で財政規律を緩めると(年金基金問題が起きた)英国のようになる。慎重な対応が必要だ」とした。「日本もいずれ(金融政策を転換する)Xデーを迎える。日銀と金融機関はコミュニケーションをとって軟着陸できるようにしたい」と話した。

野村ホールディングスの奥田健太郎グループ最高経営責任者(CEO)も「政策当局や投資家とコミュニケーションを取りながら、市場にネガティブな反応が出ないように努力をしていくのが金融機関の務めだ」と語った。

超低金利が長期化していることに警鐘を鳴らす意見も相次いだ。みずほフィナンシャルグループ(FG)の木原正裕社長は「金利が動く状況を経験したトレーダー、ディーラーがいなくなっていることが相当怖い。緩和の出口を探る際は注意深く市場と対話しないと大きなリスクになる」と指摘した。三井住友FGの太田純社長は「円安が加速してインフレが進めば、極めてナローパス(狭い道)でコントロールする難しさが出てくる」と強調した。

日銀の金融緩和の評価については、三菱UFJFGの亀澤宏規社長が「デフレだった状況から脱しつつある」と一定の評価をした。マイナス金利政策で「銀行の収益構造は苦しい」とも述べた。

金融再編など今後のあり方を巡っても活発な議論が行われた。三井住友の太田氏は「3メガと言っても事業ポートフォリオも戦略も随分と変わっており、規模の利益を追求して一緒になるということはもう考えづらい。金融業以外の事業者と今後さらにコラボレーションが進むという可能性は十分ある」と指摘。異業種との連携が今後の軸になるとの見通しを語った。

大和の中田社長も「ファンドラップをゆうちょ銀行のネットワークで販売しており、シェアリングで大体のことができるので、(金融機関同士が)あえて一緒になることのメリットはなかなか見いだしづらい」と同調した。

三菱UFJの亀澤社長も必要な金融機能をM&A(合併・買収)を通じて補っていく必要があるとの考えを示した。「分散型自律組織(DAO)などもでき、組織という考え方が変わりつつある」と説明した。

野村の奥田CEOは「金融というのは残るが、プレーヤーは今と同じではないとずっと思っている。そこに向けてどういうふうに、顧客に接しながら生き残っていけるのか」と話した。みずほの木原社長は「これからは金融ということではなくて、サステナビリティーみたいなところで、一緒にその事業会社と何かをやるとか、コンソーシアム的なことがいろいろ出てくる」と分析した。

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

セレクション

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン

権限不足のため、フォローできません