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つみたてNISA・iDeCo… 詰めの一歩も忘れずに

知っ得・お金のトリセツ(64)

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10月4日は「投資の日」だった。日本証券業協会が1996年に始めて「貯蓄から投資」「貯蓄から資産形成」への旗を振る日とされてきた。以来、四半世紀――。2000兆円近くに膨らんだ家計金融資産の過半が金利ゼロの預金に滞留する状況は変わらないが、日経平均株価が31年ぶりの水準を回復した後に迎えた今年は、振り返れば転換点と記録されることになるかもしれない。新型コロナウイルス禍で投資への「最初の一歩」を踏み出した人が着実に増加しているのだ。あとは踏み出した後の「詰めの一歩」も気を抜かず、実利へとつなげたい。

つみたてNISAは6割、iDeCoも2割の大幅増

原動力は税制優遇措置のある投資の器、少額投資非課税制度(NISA)と個人型確定拠出年金(iDeCo=イデコ)だ。特に少額から可能な積み立て型の「つみたてNISA」の口座数は今年3月末に361万口座と1年間で6割増加した。20~30歳代の口座数が8割以上伸びてけん引した。

原則60歳になるまで引き出せず、より年金の性格の強いイデコも194万口座と1年で2割増加している。コロナ禍で膨らんだ労働所得に対する先行き不安が資本所得への関心を高め、投資で早期退職を目指す「FIRE(Financial Independence, Retire Early)ブーム」も起きている。まずは投資の大海に一歩、踏み出したのはめでたい。ただ、その次の一歩が適切に続かないケースも少なくない。

もう一歩① 口座を開いたら投資を始めよう

口座開設はゴールでなく、単なるスタート。ところがそこで満足している人が殊の外多い。昨年末時点のつみたてNISAの口座のうちほぼ3人に1人が買い付けを行っていなかった。特に20歳代では37%もの「未投資口座」が存在する。

つみたてNISAは毎年40万円までの投資に対し、最長20年間運用益が非課税になるもの。年5%で運用できれば元本800万円に対して500万円以上の運用益が享受できるシミュレーションがおなじみだが、あくまで机上の計算。口座開設だけで満足して実際に投資信託を購入しなければ全く意味はない。最近は「高値圏で始めるのは嫌だ」との意見もあるが、20年運用を見渡せば1回分の買い付けのインパクトは480分の1で0.2%分のインパクトしかない。それよりは早めに始め、時間を味方に付けよう。

もう一歩② iDeCoの所得控除は魅力的だが…

もう一つの非課税制度、イデコへの人気も高まっている。最大の魅力が資金の「拠出時」「運用時」「受け取り時」の3つのタイミングで実感する非課税メリットだ。NISAも同様の運用時非課税は、通常なら差し引かれる約20%が節約でき、効率的に複利運用ができる。受給時も年金方式か一時金方式かに応じ、課税所得から差し引ける「お得枠」が使える。そして3つの中でも最も現役世代の心に響くのが「今使えるお金が増える」拠出時の非課税メリットだ。

イデコへの掛け金は全額が所得控除の対象なのでその分、その年の所得税と翌年の住民税が減って可処分所得に回せる。年収500万円程度(所得税率5%)の人が月2万3000円をイデコに回すと年4万円強の節税効果がある。30年間なら120万円以上。それは間違いない。だが「それが魅力でイデコに入った」という専業主婦(夫)の人がいればその理解は残念ながら正しくない。所得控除が節約につながるのは課税所得のある人だけだ。「3つの節税」が前面に出されるイデコだが人によっては必ずしも3つそろわないことに注意が必要だ。

そして最後に節税額は皮算用した後、意識することなく日常の生活費と紛れてしまってはもったいない。会社員の場合、所得税分についてはまもなく訪れる年末調整後に12月分の給与と一緒に振り込まれる。住民税は来年6月以降の支払い額が減る形なので一段と実感が湧きにくい。節税分は額として把握し、別枠で取り分けておくと一段と家計の賢さが増す(はずだ)。

山本由里(やまもと・ゆり)
1993年日本経済新聞社入社。証券部、テレビ東京、日経ヴェリタスなど「お金周り」の担当が長い。2020年1月からマネー・エディター。「1円単位の節約から1兆円単位のマーケットまで」をキャッチフレーズに幅広くカバーする。

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

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