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遠い先にある退職金 まずは会社の制度をチェック

今から考えたい「退職金」(1)

退職金について若い世代はなかなか意識する機会がない(写真はイメージ=PIXTA)

今月は「退職金(企業年金)」をテーマとします。会社人生で最後に、会社があなたにまとまったお金をくれる仕組みがあります。それが退職金です。

定年退職者の場合、1年分の収入以上になることもある大きな収入でありながら、ほとんどの人が無関心です。あなたのLife(生活)にこのMoney(お金)をどう生かしていくべきでしょうか。

若いうちには意識しない「退職金」という財産形成

会社の制度である「賃金」「賞与」「諸手当」「退職金」を自分の関心順に並べるとあなたはどうするでしょうか。退職金のランクはおそらく最下位になることでしょう。

毎月もらう「賃金」がいくらになるかは一番気になります。年に2回ほどもらえるまとまった高額収入である「賞与」も、会社の業績で変動することがあるので会社の発表があるまで気になって仕方ありません。賃金に上乗せされてもらえるいろいろな「手当」もできれば多くもらいたいところですし、自分が対象になるのか気になります。

若いうちはほとんど意識しない「会社とのお金の関係」のひとつが退職金制度です。自分の会社に退職金制度があるのか、企業年金制度があるのか、知らない人は多いものです。

退職時に何らかの金銭的支払いを行う約束がある場合、就業規則にそれを記載し、退職金規定や企業年金規約で詳細を定めます。しかし、読み込んでいる人はほとんどいません。そもそも、そのお金をもらうタイミングが遠い先なので実感もしにくいのです。

生涯賃金が7%増えるインパクト

しかし、あなたの生涯賃金に占める退職金の割合は高いのです。独立行政法人労働政策研究・研修機構の公開する「ユースフル労働統計2020」によると、大卒入社の男性会社員が60歳まで働いた場合の獲得賃金は2億7000万円です。これに退職金が1900万円上乗せされ、また60歳以降も働くことで、私たちの生涯賃金は3億3000万円まで上積みされていきます。

60歳時点で退職金として現役時代の獲得賃金の7%相当をいきなりもらうことになります。これは大きなインパクトです。

あなたがもし1000万円以上の預金をもっていたら、資産の保全策として破綻リスクのある銀行には預けないようにしなくてはと考えるでしょう。しかし、制度として会社に預かってもらっているともいえる退職金について、その受給権や資産保全の状態を考えている人はほとんどいません。これはちょっと危うい話かもしれません。

退職金は「後払い賃金」

退職金制度は本質的には「後払いの賃金」です。毎月の仕事の貢献度からその権利が生じていて、それを退職時にまとまった形で受ける約束と考えられるからです。

本当は毎月もらってもいいわけですが、退職後の生活を考えると、会社に管理してもらうことでリタイア直前にまとめて受け取ったほうが、老後の安心にもつながります。

仮に退職金が1000万円で、38年間働くということは毎月2.2万円くらい会社から多く給料をもらっていたのと同じことですが、それを会社に預けて運用してもらい、最後にまとめてもらうことなのです。

上場企業の決算には退職給付会計がありますが、これも「後払いの賃金」の考え方にもとづいています。退職金の支払いは社員の将来に対する「債務」と考えているからこそ、企業の決算にも計上し、積み立て不足は公開され、企業評価にも影響します。

それほど重い支払い責任があっても、若い世代は退職金について無関心です。人事部では「若い社員が退職金に興味を示した? それは転退職を考えているということだよ」というブラックジョークがあるほどです。

退職金を、会社を辞める人だけが興味を持つ制度で終わらせてていいのか、これは会社の問題でもありますし(社員へのPR不足)、個人のマネープラン上の大問題でもあります。

自分の会社の退職金制度を調べてみよう

退職金制度は会社ごとに定められるので、「制度の有無」「制度の種類」はもちろん、「受け取れる金額」「ペナルティールール(自己都合退職や懲戒解雇時の減額など)」も、社内の規定によります。

そもそも退職金制度がない会社も約20%あります。金額も先ほどの調査の水準は高めの印象で、数百万円程度ということも少なくありません。

まずは自分の会社の社内規定を調べてみましょう。社内イントラネットで就業規則、退職金規定あたりを探します。

福利厚生や諸制度のパンフレットやイントラネットのコンテンツがあれば標準的な定年退職者のモデル水準が記載されていることがあり、具体的なイメージがつかみやすくなります。人事部に知り合いがいるなら聞いてみてもいいでしょう。

本当は自分にかかわる人事制度のひとつですから、会社に聞くことに何の問題もありません。でも「転職予備軍」と人事に誤解されるのは気になるところかもしれません。そのときはぜひ、日経新聞のコラムを読んで興味を持ったんだよ、と言ってみてください。あなたの人生に大きく影響するお金です。自分の退職金を知るための「言い訳」に使っていただけるなら、本コラムも本望です。

◇  ◇  ◇

FP山崎のLife is MONEY」は毎週月曜日に掲載します。

山崎俊輔(やまさき・しゅんすけ)
フィナンシャル・ウィズダム代表。AFP、消費生活アドバイザー。1972年生まれ。中央大学法学部卒。企業年金研究所、FP総研を経て独立。退職金・企業年金制度と投資教育が専門。著書に「読んだら必ず『もっと早く教えてくれよ』と叫ぶお金の増やし方」(日経BP)、「大人になったら知っておきたいマネーハック大全」(フォレスト出版)など。http://financialwisdom.jp

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ファイナンシャルプランナーの山崎俊輔氏が若年層に向けて、「幸せな人生」を実現するためのお金の問題について解説するコラムです。毎週月曜日に掲載します。

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