/

イアン・ブレマーが語る身震いするリスク(佐々木明子)

テレビ東京アナウンサー・佐々木明子のニュースな日々

世界的な米政治学者に「一番の懸念は何か」と聞いた

年を取ると経験の数だけ勘も鋭くなるが、最近のこの何とも言えないザワザワした感覚は何だろう。世界各所で起きている悲惨な出来事を報じながら、次のリスクの気配に神経を研ぎ澄ます――そんな毎日だ。新型コロナウイルスに始まり、インフレ、戦争。いつの間に世界はこんなにリスクにまみれてしまったのだろう。

世界的な米政治学者のイアン・ブレマー氏が来日した。世界の要人とつながり、各地の情報を持つ彼は今、何を一番懸念しているのか。15分だけ時間をもらえた。

時間はない。ストレートに聞こう。「一番の懸念は何ですか」。眼鏡の奥の瞳は、憂いを帯びている。「今後数カ月間でいえば、ロシアと北大西洋条約機構(NATO)加盟国の間で戦争が起きることだ」。核兵器の使用もないとは言えない、と付け加えた。彼には何度もインタビューをしたが、トランプ米大統領誕生の時の危機感を上回る、追い詰められたような瞳だった。

さらに長期的なリスクとしては気候変動がもたらす大規模な洪水や干ばつを挙げ、これは何兆ドルもの被害や何億人もの命に関わってくると顔をゆがめた。

番組で使えなかった「取材時間終了後」の熱弁

ブレマー氏の背後にいたディレクターが手でバツを作った。「インタビューの時間を過ぎているのでもう終わらせて」という合図だ。もらった時間を超えるのはマナー違反だ。仕方がない。

「ありがとう」と終わらせようとしたところ。遮るように、彼は言葉に力を込めて続けた。「もう一つ、破壊的なテクノロジーの拡散がある」。眉間のシワが深くなった。「自律型ドローンや人工知能(AI)、偽情報、アルゴリズム、ソーシャルメディアが子供の成長に与える影響が懸念される。人間の生産性向上に役立つ量子コンピューターなどは、同時に危険で深い破壊性を持つ。だが、誰もそれを抑えようとしていない」

ブレマー氏自身が話し続けるので広報の方も止めようがない。時計に目を落としながら、すがるようにバツを出していた。

私たちはどうしても、目前のリスクに目を向けがちだ。オンエアは時間が限られる。1時間インタビューしても、1分しか使えないこともある。今回はロシア情勢が緊迫していることもあり、核兵器使用のリスクの部分を使ったが、冷静に話を聞くと、彼の指摘する長期的なリスクに身震いをした。

もはや誰が責任を負っているか分からない、誰が完全に理解しているかも分からない、膨張するテクノロジーにのみ込まれようとする人間社会の行く末。ザワザワする感覚にとらわれている理由が分かった気がした。

最近のMy News「旅先で思いがけずハラハラ」

長野県松本市の上高地に旅した夕方、湿原の木道でサルの親子に出会った。うわあ、ボスザルまで。――後ずさりをすること、数分。湖のほとりまで追い詰められてしまった。木の枝を構える夫を横目に見ながら、「もう駄目だ」と、久しぶりに腹をくくった瞬間だった。結局、無事でしたけどね。

「佐々木明子のニュースな日々」は、国内外の経済やマーケットの動きを伝えるテレビ東京「WBS(ワールドビジネスサテライト)」のメインキャスターを務める佐々木明子さんが、金融・経済の最前線の動きや番組制作の裏話などをつづるコラムです。

[日経マネー2022年12月号の記事を再構成]

日経マネー 2022年12月号 ここから上がる 厳選日本株&米国株
著者 : 日経マネー
出版 : 日経BP(2022/10/21)
価格 : 750円(税込み)
この書籍を購入する(ヘルプ): Amazon.co.jp 楽天ブックス

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

セレクション

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン

権限不足のため、フォローできません