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相続の成否を左右 子供の世帯単位でバランスを取る

最新終活マニュアル(6)

断捨離や見える化を通して財産の全体像が見えてきたら、それを誰に、どう分配するかも考えておく。その際は、過去の贈与も含め、子供の世帯単位での贈与額に配慮してバランスを取ることが重要だ。

財産の断捨離や見える化のメドが立ったら、次のステップの「自分の財産を把握し、誰に、どれだけ分配するかを決める」に進み、ある程度、相続の道筋をつけておく。相続税がかかるか、かからないかも気になるところだ。

基本的に被相続人の財産は全て相続税の課税対象だ。ただし、一部例外もある。なお、相続時精算課税制度を活用した場合や、贈与税の特例などを使って相続開始前3年以内に相続人などに生前贈与をしていた場合は、その分も相続税の課税対象となる。まずは、下の図を参考にして、課税財産がどれくらいあるかをリストアップしてみよう。

その際に気を付けたいのが、「相続税評価額」の算出方法が財産によって異なることだ。例えば、預貯金は相続が発生した日に中途解約した金額で計算する。一方、上場株式は、下の図の①~④の中で最も低い株価を選ぶ決まりになっている。

不動産の評価方式は所在する地域で異なる

ややこしいのは不動産だ。自宅の土地の評価額は通常、国税庁が定める「路線価」を使って「路線価×地積×補正率」の式で求める(路線価方式)。路線価が定められていない地域では、「固定資産税評価額」に一定の倍率を掛けて算出する(倍率方式)。また、自宅の土地の場合、330㎡までの相続税評価額を最小2割に圧縮できる「小規模宅地等の特例」が使えるかどうかで評価額が大きく変わる。

相続税評価額を自分で計算するのが難しければ、おのおのの財産の金額を入力するだけで概算の評価額が自動計算されるウェブサイトのサービスを使ったり、税理士や金融機関のプロに依頼したりすることもできる。

なお、相続税には「3000万円+600万円×相続人数」という基礎控除があり、相続税評価額の合計がこの基礎控除を超えなければ相続税はかからない。かかる場合も、基礎控除を超えた分だけが課税対象となる。

法定相続分でない相続には遺言書が必要

相続財産の概要が把握できたら、相続人をリストアップし、誰にどの財産をどれだけ相続させるか割り当てていく。分配の前に把握しておきたいのが、子供への過去の贈与だ。特定の子供に留学や住宅購入などでまとまったお金を渡していたら、それを踏まえて他の子供に多めに分配しないと、他の子供が納得しない可能性がある。

さらに、MUFG相続研究所所長の小谷亨一さんは世帯単位でバランスを考えることを薦める。例えば、相続人が2人兄弟で、兄夫婦には子供が3人いるが、弟夫婦には子供がいないとする。親が孫の学費や習い事代などを援助してきたとしたら、相続に当たってはその分、弟の方に手厚く財産を渡してバランスを取る必要がある。

特定の子供や子供の配偶者が終末期の介護を担った場合も配慮が求められる。「子供には親を扶養する義務があるため、親の面倒を見るのは当然と見なされ、遺言がなければ遺産分割での取り分は介護を担った子供も他の子供と原則平等となる可能性がある」と小谷さんは話す。

相続の場で介護に当たった子供や子供の配偶者がその代償を要求したとしても、他の相続人はどれくらい介護が大変だったのか判断できない。「だからこそ、介護してもらった本人が生きているうちにその準備をしておくのが望ましい」と小谷さんは助言する。

具体的には介護した子供の取り分を増やしたり、子供の配偶者に直接遺贈したりする形だ。ただし後者の場合、子供の配偶者は相続人でないため、相続税がかかるケースでは配偶者の相続税額が2割加算となるので気を付けたい。

このように諸般の事情を配慮して法定相続分(相続人が兄弟姉妹だけの場合は均等分割)でない相続を行う場合は、遺言が必要となる。次の最終回では、遺言の活用法や注意点について説明する。

取材協力
小谷亨一さん
三菱UFJ信託銀行MUFG相続研究所所長。2012年にリテール受託業務部部長となり、遺言の企画・審査・執行業務などに従事。20年2月のMUFG相続研究所設立時に所長に就任。現在は、相続・不動産のエキスパートとしてセミナー講師を務める傍ら、メディアでも活躍している。

(ライター 森田聡子)

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