G7とE7・地銀システム・変調IPO 金融PLUSまとめ読み

日経電子版金融セクションの「金融PLUS」は金融政策の先読みや金融ビジネスの裏話を経験豊富なエディター陣が解説するコラムだ。国際金融の覇権を巡る先進国と新興国の対立、急速に進む円安、金融機関のシステム問題、新規株式公開(IPO)市場の変調など取り上げるテーマは幅広い。普段の金融報道とは違う「プラス」を与える記事を選んだ。
4月20~22日に開いた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁の関連会議は、共同声明を出せずに決裂して終わった。あらわになったのは、ロシア問題を巡る日米欧7カ国(G7)と新興国の分断だ。中ロなど主要新興7カ国(E7)の経済規模は2030年にG7を追い抜くとされる。G7とE7の分断は短期的には対ロ制裁の効果を弱め、長期的には米国と中国の覇権争いのバランスを大きく変化させる。揺らぎ始めた戦後経済秩序の先行きを読み解く。

米国で長期化するインフレは日本の金融機関にも影響を与えている。賃金上昇が急で、既存の報酬体系では新規採用や中核人材のつなぎ留めに支障が出かねないためだ。インターンに月額で200万円を支給する米国の金融機関も出てきたという。ニューヨークの家賃は2桁上昇が当たり前で、住む家が見つからないといった駐在員の嘆きも聞こえてくる。

3月26日に地方銀行8行とローソン銀行でシステム障害が起きた。みずほ銀行でのシステム障害との最大の違いは銀行側のミスではない点だ。システムの共同利用に伴う「もらい事故」のリスクを浮き彫りにした。重要な金融インフラである銀行システムが頻繁に障害を起こすのは問題だが、日本はインフラへの要求水準が高すぎる傾向にある。これが金融機関がシステムの維持管理に重点をおき、技術革新が起こりにくい一因にもなっている。

世界でエネルギー価格の高騰が続く中、日本で2019年に創設された電力先物市場が注目されている。乱高下する電力の市場価格をヘッジ(回避)するニーズが高まり、東京商品取引所の21年の売買高は前年比8割増えた。実は日本の電力先物市場に占める東商取のシェアは2割に満たない。東商取を圧倒的に上回る取引規模を持つのが、20年5月に日本市場に参入した欧州エネルギー取引所(EEX)だ。さらなる活性化に向けた市場制度の改革が課題だ。

日本の通貨「円」の弱さが際立っている。対ドルでみると、円は130円台の安値を付け、総合的な実力を示す実質実効為替レートは50年ぶりの低水準だ。実質レートの円安は、日本の企業や個人が海外で活動するコストが高いことを意味しており、日本の割安感が指摘されるケースもある。1980年代に日本の物価が高いといわれた「内外価格差」問題が逆方向で進みつつある。

活況だった国内の新規株式公開(IPO)市場が変調を来している。上場初日の初値が公開価格を下回る例が後を絶たない。IPO直後は必ず株価が上がるという「常勝神話」が揺らぎ、政府が問題視してきた「安すぎる公開価格」を巡る証券界の論議にも影響を与えそうだ。そもそも日本市場には、米国などと比べて小粒な案件が多い「スモールIPO」の特徴がある。巨大な機関投資家が投資するにはサイズが小さすぎて、結果的に不安定な個人投資家の心理に左右されてしまう構造問題がある。


日本・海外の金融政策の「先読み」や金融ビジネスの裏話を、経験豊富なエディター陣が解説します。普段の金融報道に「プラス」を与えるコラムです。
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