株式の配当 企業が得た利益を株主に分配
キソから!投資アカデミー 株式③
株価が動く理由には「配当」もあります。配当は企業が得た利益を株主に分配する手段で、金額は1株あたりで示します。3月期決算の企業の場合、3月末と9月末に株主名簿をチェックして、名前が載っている株主に期末配当と中間配当を払うのが一般的です。持っている株数が多いほど、得られる配当も増えます。
東証プライム市場に上場する企業の7割近くは3月期決算です。配当を巡る思惑による株価の動きも、3月末や9月末に向けて鮮明になります。企業が配当を出すタイミングや、配当の増減のニュースによって株価も上下します。
株主が配当を受け取るには、企業が配当を払う株主を決める日(権利確定日)までに株主名簿に名前が載っていなければなりません。株を買っても、すぐに名前が載るわけではありません。権利確定日の2営業日前(権利付き最終売買日)までに株を買う必要があります。

個別銘柄の配当が高いかどうかを判断する目安の一つが「配当利回り」です。配当利回りは、1株あたりの年間配当額を株価で割って計算します。配当利回りが高い銘柄は、権利付き最終売買日が近づくと株価が上がる傾向があります。配当を狙った買いが集まりやすいためです。
実際に配当利回りが高い銘柄の株価の動きを見てみましょう。プライム市場に上場する銘柄のうち、2023年2月6日時点で配当利回りが高い順に並べると、上位には海運株や資源株が並んでいます。日本郵船と商船三井の配当利回りは16%台で、他銘柄を大きく引き離しています。
21年末から22年3月期末にかけての株価を振り返ると、日本郵船株は期末配当の権利付き最終売買日である3月29日までの間に3割近く上がりました。業種別日経平均株価の海運業も2割ほど上がっています。配当狙いの買いが株価を押し上げたようです。同じ期間に日経平均株価は2%下がりました。
配当に関連して、覚えておくべきなのが「権利落ち」です。権利付き最終売買日を過ぎて配当を受ける権利がなくなり、その分理論上の株価が下がるのが権利落ちです。株価は理論上、配当分だけ下がります。
たとえば株価が1000円の銘柄で一株の配当が10円であれば、権利落ちで株価は10円安い990円となる計算です。長い目で配当収入を考えるのであれば、権利落ちした株を安く買う手もあります。
配当を増やすことを増配、配当を中断していた企業が配当を復活させることを復配といいます。増配や復配が伝えられると株価に上昇圧力がかかりやすくなります。一方で配当を減らすことを減配、配当を出さないことを無配といいます。減配や無配に転落すると、売りが出て株価の下落要因になることもあります。
配当利回りが高いとされる業種も移り変わるので注意が必要です。かつて電力株は配当利回りが高い銘柄の代表格とされました。23年2月現在、燃料高などの影響で多くが無配に転落しています。