7億円を運用する割安株投資の達人 5年保有で2倍高狙う
スゴ腕の個人投資家が伝授 新年度相場の攻略法(1)

「何らかの異変が起きても影響が少なそうな企業の株でポートフォリオを組んでいる。だから、ロシアがウクライナに侵攻したからといって、それで特に何かを変えることはない」

ロシアのウクライナ侵攻が伝わり、日経平均株価が400円超下落して、2万5970円82銭の昨年来安値を付けた2月24日の翌日。日経マネーの取材に応じた男性は、こうした回答を寄せた。専業投資家のごはんさん(ハンドルネーム)。時価評価で7億円を超える資産を運用するスゴ腕だ。
業績が拡大している企業の株で、予想PER(株価収益率)という指標で見て割安な銘柄を購入し、値上がりを待つ。ごはんさんはこうした「収益バリュー(割安)株投資」に分類される投資法を主に手掛けて、資産を大きく増やしてきた。
景気敏感株をまとめ買い
異変が起きても影響の少なそうな企業の株で組んだポートフォリオ。その一翼を担っているのが、自動車部品メーカー株だ。コロナショックが起きた2020年。ごはんさんはこの年、コロナ禍で業績が悪化し、価格が大きく下がった株を対象とした逆張り投資を仕掛けた。その対象として選んだのが自動車部品メーカー株だった。
自動車販売は景気動向に大きく左右されるため、自動車メーカーや自動車部品メーカーの株価は景気に連動して大きく上下する。
「調べると、17年後半~18年初めにピークをつけて下落に転じた銘柄が多かった。ピーク時の水準に戻れば3~4倍高を取れる」
この自動車部品メーカー株への投資では、期待に反して反発しない銘柄の影響を少なくするために、10社を超えるメーカーの株をまとめ買いした。
さらに、複数のシクリカル(景気敏感)株を追加購入した。購入したのは、洋服や下着などのアパレル製品の生産に用いられる工業用ミシンで世界シェア首位のJUKIや、工業用ミシン専業大手のペガサスミシン製造、油圧クレーンや油圧ショベルなどを製造・販売する建設機械大手の加藤製作所などだ。これらの銘柄は、次の景気拡大期に入るまで持ち続ける構えだ。
狙いが外れてもトントンに
一方、足元で資金を振り向けたのは、コロナ禍で需要が急伸した反動で業績の拡大が一時的に止まり、それが嫌気されて割安になった銘柄だ。典型的な例として、通信販売大手のスクロールと通販専業のティーライフを挙げる。
スクロールは21年3月期に業績が急拡大した反動で、22年3月期は減収減益になる見通しだ。この変調が嫌気され、株価は4月4日時点で、昨年2月に付けた10年来高値(1485円)を44.6%下回っている。ティーライフも21年7月期に当期純利益が前の期の約1.7倍に増加したが、22年7月期は売上高・当期純利益共に横ばいの見通し。株価は軟調に推移する。

「コロナ禍で以前はインターネット通販を利用していなかった人も利用に踏み切り、利用者の裾野が広がった。市場拡大はまだ続く。両社の業績は一時的に停滞するものの、再び伸びるだろう。5年後には買値の2倍以上に上昇することを期待している。一方で配当利回りはスクロールが6%超、ティーライフも3%台の後半だ。期待に反して業績が再び伸長せず、株価が買値から2~3割下落しても、4~5年分の配当で相殺して取引をトントンで終えられる」
こうした銘柄を保有しているので、ウクライナ危機で相場が急落しても、含み損の拡大を防ぐために保有株を売ることはない。一方で、相場が暴落して有望株が大幅に値下がりしたら、保有株との入れ替えを検討するという。

(中野目純一)
[日経マネー2022年5月号の記事を再構成]
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