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臆測を捨て不確実性に対峙する国際分散投資

積立王子への道(35)

投資の世界で「積立王子」のニックネームを持つ筆者が、これから長期投資に乗り出す後輩の若者にむけて成功の秘訣を伝授するコラムです。

ワクチンの普及率と株価は相関関係にある

新型コロナウイルス対策としてワクチン接種が進んだ米国では景気回復が本格化している。日常生活が戻り始め、消費も拡大。コロナ禍で落ち込んだ内需系企業の業績回復期待から株価が上昇している。同時に、それでも金融緩和は当面続くとの見通しからハイテク系企業の株価も再び勢いを取り戻しており、米国株は全般に最高値圏にある。欧州でも同様にワクチンの普及が経済活動再開を促し、主要国の株価は堅調に水準を切り上げてきているのが最近のトレンドだ。ところが、日本株は年初の水準から一進一退で明暗が分かれている。

根本的な問題は日本経済の低成長力だ

コロナだけの問題じゃない。そもそも日本経済の成長力はコロナ禍以前から先進国最低レベル。成長できない経済に立脚した株式市場の水準は長きにわたって切り上がらない――、それが合理的な説明だ。その上コロナ対応でも明確に主要国に後れを取った。

政治と行政の失策のツケは産業界に回ってくる。コロナ後の企業業績のリバウンド力でもやはり、日本企業の劣勢は歴然だ。今年の予想増益率を比べると米企業の40%近くに対して、日本勢は20%程度にとどまる。そうした経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)の差が今年の日米株の値動きに如実に反映されているんだ。長期投資におけるリターンの源泉は投資対象の成長だ。ゆえに成長が見いだせない資産を長期保有したところで、報われるとは言い難い。

日本株はいらないか?

では日本株に投資する意味がないのかというと、それもまた違う。無論、日本の産業界の集積、日経平均株価に連動するようなファンドだけに集中投資して、後生大事に持っているなら、それは不合理な賭けと言わざるを得ない。

でも将来はいつだって不確実だ。日本経済に今後何が起こるかは誰も分からない。ポジティブサプライズだってないとは言い切れない。大方の予想に反して成長を取り戻すことだってあり得るし、ましてマーケットの値動きはなおさら不確実。もし経済が力強さを取り戻せば、株価は長期的には相応に上昇するはずだ。

不確実性に備えるのが分散投資なんだ

分散投資とはそうした将来の不確実性を前提に、だからこそ違う資産をまとめてパッケージ化しポートフォリオとして保有する行動なんだ。そして世界経済全体の成長軌道でお金を育てるのが国際分散投資だ。であれば、自分の勝手な思い込みや偏見で日本を除外すれば、ポートフォリオが世界経済全体でなくなってしまう。

どれが有利でどれが不利といった臆測を排除して、規律を定めてセットで保有することこそが分散投資の意義。長期投資家への道を歩き始めたキミたちがリターンの源泉を世界の経済成長と考えるのであれば、日本も相応な比率で保有することが合理的だ。

今や積立王子と呼ばれるボクも、かつては自分の傲慢な思い込みにこだわって幾多の失敗を重ねた。その経験からたどり着いたのが、「普通の生活者にとって最適の長期資産形成手段は、余計な臆測を排して全てを保有する国際分散投資だ」という境地なんだ!

中野晴啓(なかの・はるひろ)
セゾン投信株式会社代表取締役会長CEO。1963年生まれ。87年クレディセゾン入社。セゾングループ内で投資顧問事業を立ち上げ、運用責任者としてグループ資金の運用等を手がける。2006年セゾン投信(株)を設立。公益財団法人セゾン文化財団理事。一般社団法人投資信託協会理事。全国各地で年間150回講演やセミナーを行っている。『預金バカ』など著書多数。

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積み立て投資には、複利効果やつみたてNISAの仕組みなど押さえておくべきポイントが多くあります。 このコラムでは「積立王子」のニックネームを持つセゾン投信会長兼CEOの中野晴啓さんが、これから資産形成を考える若い世代にむけて「長期・積立・分散」という3つの原則に沿って解説します。

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