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株式売却益・配当へ課税強化案、米株価に冷や水

9月30日の米株式市場でダウ工業株30種平均は引けにかけ下げ幅を拡大した。一部の富裕層が株式売却益に対するキャピタルゲイン税増税に関する議会審議の不透明性を嫌って、ギリギリまで迷った揚げ句に、一部の保有株式の売却に踏み切った事例の「目撃談」が市場には流れた。

米国上院は民主・共和が50議席対50議席の状況で、最終的には副大統領が最後の一票を持ち民主党がかろうじて決定権を握る。そこに、民主党内で造反議員が出始め、10年間で計3.5兆ドルのバイデン歳出案の大幅縮小を迫っている。しかし、バイデン大統領も安易な妥協はできない。3.5兆ドル規模の社会福祉向上・気候変動対策案は、選挙公約のコアなのだ。

その財源として、まず、連邦法人税はトランプ減税による現行の21%から26.5%への増税が、民主党修正案として提示されている。さらに、個人所得税の最高税率も39.6%に引き上げる。バイデン大統領は、あくまで高所得者に増税して、中間層以下に所得再配分する姿勢を貫く。対する共和党はいかなる増税にも拒否反応を示す。

仮に法人税増税が実施されれば、サプライチェーンの目詰まりなどでコストアップに苦しむ企業サイドには、さらなる負担となり、企業業績への影響は避けられない。

さらに、株式市場(特に高所得者)を狙い撃ちしたキャピタルゲイン税の最高税率も、民主党修正案では現行の20%から25%へ引き上げられる。諸々の名目の関連付加税や州政府レベルでの追加課税を含めると、40%を超える州も出てくる。相続税の控除も減額との案もある。

これに加えて、配当への課税を現行の29%から37%に引き上げる案もマーケット内には流れている。具体的税率は未確認だが「大幅引き上げ」の方向性はバイデン政権の既定路線だ。

これまで市場は、バイデン大統領の兆ドル単位の大盤振る舞いを歓迎して織り込んできた。しかし、その財源に関する議論は意識的に後回しにしてきた。

それが、債務上限問題と大型歳出案の議会審議がもつれ、「ワシントン・リスク」が顕在化するや、その財源の議論も避けがたくなったのだ。

10-12月期には、増税という市場が最も嫌う課題に、いよいよ向き合うことになる。具体的増税率は、議会での妥協により、今後、変わってゆくだろう。しかし、年末にかけて富裕層の株式売却傾向が加速する事態は考えられる。

2022年に中間選挙を控え、米国メディアも連日「議会紛糾」をトップ級の扱いで報じている。日本でも新政権の経済政策がトップ級の市場材料となっているが、その全容はすぐには明らかにならない。対して、米国の増税を含む政治混迷は現在進行形で日々迷走している。その米国株価への影響は、直ちに日本株にも及ぶ。

日本人投資家としては、まずは相場に即効性のある米国政治情勢に注目する必要があろう。東京市場は日中から時間外ダウ先物価格の変動にも目配りするほどのNY市場依存体質だ。「所詮、対岸の火事」「米国政治には疎い」では済まされない。

豊島逸夫(としま・いつお)
豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
・業務窓口はitsuotoshima@nifty.com
  • 出版 : 日経BP
  • 価格 : 1,045円(税込み)

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