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DX・税制… 2021年、差が付く年末調整

知っ得・お金のトリセツ(67)

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選挙も終わり年末が気になる時間帯に入った。そう、年末調整の季節だ。全国6000万人近い給与所得者に関わる一大イベント。毎月会社がざっくりと天引きして国に納めている所得税額を計算し直し、過不足を調整する。日本で終戦直後から続く「風物詩」だが、近年その風景がガラリ変わり始めた。背景にあるのが同時進行で加速している技術の進歩と税制の複雑化だ。双方が交差する今年は特に、一言で形容すると「差が付くイベント」になっている。「アナログな会社とデジタルな会社」「お得に敏感なサラリーマンと鈍感なサラリーマン」――。さて、自分はどっちだろう?

アナログ社・昔ながらの年末調整

「もうこんな季節か。これ、なんの書類かわかんないけど、出せ出せってうるさいんだよな」。アナログ社に勤める山田太郎(仮名)は3種類の紙を手にぼやく。独身でもあり全くピンとこない。「取りあえず名前を書いてハンコを押して返す書類」という程度の認識だ。だが気づくと今年の書類にはハンコを押す欄がない。「う~ん、これがはやりのデジタルトランスフォーメーション(DX)……」

「違うだろ」と寛容にツッコミを入れてやりつつ、書類記入の手を緩めないのは隣席の家族持ち・住宅ローン持ちの先輩だ。「キミも家族ができたらわかるよ」。「この控除申告が正しくなされているかどうかで、ざっくり数万円、いや住宅ローンまで考えれば数十万円単位の手取り差につながるんだ。ちゃんと金融機関から届いた控除証明書も添付してっと」

デジタル社・自動でデータ取得、転記完了

一方、本当にDX化が進むデジタル社。鈴木花子(仮名)はリモートワーク中に年末調整を終えた。国税庁は昨年から年末調整に使える無料ソフトを配布するなどして電子化に本腰をいれている。ただ、年末調整の主体である企業の対応はまちまち。一部プロセスだけ電子化を始めた会社や紙とデータの提出が併存する会社がほとんどだが、最終進化形になった場合のカギを握るのが「マイナポータル」、マイナンバーを活用した政府運営のオンラインサービスだ。

「まずマイナンバーカードを読み取らせて、4桁の暗証番号をいれて……」。器用にスマホを操って自分のマイナポータルに入る花子。「よしよし、届いてる」。契約している生命保険と地震保険の保険料控除証明書がそれぞれの会社から電子交付されている。「これをこっちにインポートしてっと」。指示に従いながらクリックしていくとスムーズに申告書が作成された。データで提出された会社側は紙の控除証明書と突き合わせる必要もなく、誤記チェックや検算の手間も省ける。

広がる対象 確定申告ではふるさと納税も

去年から始まったものの一部の生命保険会社にとどまっていたこの電子交付が今年、広がりをみせている。1日現在、マイナポータルと連携可能と国税庁のサイトに載っているのは生保12社、損保6社、共済4社。保険料控除に限ってはほとんどのケースで対応可能といえそうだ。一方、住宅ローンがある人が対象の「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」をマイナポータルに届けてくれるのは、今のところ「フラット35」を展開する住宅金融支援機構の1社だけ。個人のマイナポータル対応と企業の年末調整の電子化が進んでも、控除証明書を発行する金融機関の対応が進まなければ「最終形」には進めない。

朗報としては年末調整ではなく、年が明けてからの確定申告の話になるが、個人に人気のふるさと納税で税控除を受ける場合の必要書類「寄附金受領証明書・寄附金控除に関する証明書」も来年からマイナポータル経由で受け取ることが可能になる。大手ふるさと納税ポータルサイト4社が電子交付を始める。

年末調整イコール節税チャンス

とはいえ、控除は天から降ってこない。自ら申告する必要がある。自分が取りこぼしているお得はないか、税の仕組みに対して感度を高めよう。特に意識しておきたいのが「所得控除」だ。言葉は取っ付きにくいが個々の事情を勘案する「節税ポイント」と考えると分かりやすい。同じ所得でも養う家族が多かったり、障害があったり、将来のもしもに備えて保険料を多く負担していたりすると「経費」として計上でき、その分税負担が減る仕組みだ。現在15種類ある所得控除は可能な限り活用して課税所得を減らすのが会社員の節税の基本だ。例えば大学生の子どもの国民年金保険料を肩代わりしていないか? 実家の老親に定期的に仕送りをしていないか? 話題のiDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)に入ったのはいいが「小規模企業共済等掛金控除」の申告をし忘れてはいないか? 確認しよう。

複雑化する税制がネック

そこでネックになるのが複雑化する税制だ。今年は大きな変更はないが、なんといっても昨年大きく変わったばかり。いまだ消化難で、新税制に対応しきれず税金を多めに払っている可能性のある人はいる。ポイントは昨年登場した、やたらに長い申告書「基礎控除申告書兼配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」にある。要は昨年、高所得者に対して行った増税の影響を一部緩和するため新しく「所得金額調整控除」の項目ができた。詳述はまたの機会とするが、例えば年金と給与を両方もらっている働くシニアの場合、確定申告をすることで税金が戻る可能性もある。賢く制度を利用しよう。

山本由里(やまもと・ゆり) 1993年日本経済新聞社入社。証券部、テレビ東京、日経ヴェリタスなど「お金周り」の担当が長い。2020年1月からマネー・エディター。「1円単位の節約から1兆円単位のマーケットまで」をキャッチフレーズに幅広くカバーする。

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

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