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テーパリング封印、仮想通貨バブル加速も

連日、市場の価格変動要因としてインフレが注目されている。

特に、米連邦準備理事会(FRB)がワクチン接種後の経済過熱を「一時的インフレ」と位置付け、オーバーシュートしてバブルが想起されても容認する構えだ。その「バブル」の前兆として引き合いに出されるのが暗号資産(仮想通貨)ビットコインブームである。

そもそもパウエルFRB議長は、仮想通貨を「投機対象の資産」と一蹴してきた。これは、3月22日のBIS(国際決済銀行)主催によるオンライン・サミットで、司会役の英フィナンシャル・タイムズ(FT)ジリアン・テット氏が「仮想通貨が金融システムの安定の脅威になるか」と質問した答えであった。パウエル氏は「仮想通貨は価格変動が激しく、価値の裏付けもなく、支払い手段にはならない。ゴールドに近く、米ドルの代替通貨にはならない」と述べた。その後のビットコインバブルによる価格大変動により、仮想通貨の「価値の保存機能」には大きな疑義がついた。

結局、ビットコインのバブル的価格乱高下は容認できないが、ワクチン接種進行に伴うバブル的経済過熱は一時的と容認の姿勢だ。

しかし、現在の市場を俯瞰(ふかん)すれば、仮想通貨の価格変動が、一時のVIX(恐怖指数)のごとき存在として意識され、リスクオフを醸成する要因にまで変異してきた。年後半に、FRBの資産購入縮小(テーパリング)を否定し続ければ、過剰流動性が仮想通貨市場を荒し、市場不安定要因となるシナリオも現実味を帯びる。ビットコイン価格の高騰が市場のリスクオンを誘発して、過度のリスク志向を醸成するリスクがある。

仮想通貨の動きが米連邦公開市場委員会(FOMC)で金融政策に影響を与える要因の一つとして議論されるときがくるかもしれない。この種のバブルはテーパリング封印のリスクとしてパウエル議長も一時的にせよ容認できまい。

仮想通貨市場の視点では、米証券取引委員会(SEC)、FRBそして財務省から規制強化の動きが顕在化しつつあり四面楚歌(そか)の様相だ。

特にサイバー攻撃のランサム(身代金)ウエアとして仮想通貨が使われる事例を規制当局は重く受け止めている。ハッカーらの犯罪集団「ダークサイド」が「顧客」へのサービスの一環として「ビットミックス」を提供してきたことが問題視される。身代金として支払われた仮想通貨の資金洗浄サービスだが、ここを監督当局はサイバー攻撃への「反撃標的」として位置付ける可能性がある。SECのゲンスラー委員長は、民間時代にMIT(マサチューセッツ工科大学)でフィンテックについて教鞭(きょうべん)をとり、暗号資産にも精通しているとされる、その道のプロだ。まずはお手並み拝見という状況である。

豊島逸夫(としま・いつお)
豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
・業務窓口はitsuotoshima@nifty.com
  • 出版 : 日経BP
  • 価格 : 1,045円(税込み)

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