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日本渡航中止はバイデン大統領からの助け舟か

米国の日本への渡航中止勧告により、ウォール街でも東京五輪が現実的な話題になってきた。直接的に日本株と接点がない市場参加者も含め、様々な議論が交わされている。米メディアもこの話題を様々な角度から報道している。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は、ソフトバンクグループ孫正義会長兼社長の五輪反対ツイートを紹介。ビジネス界でスポンサー企業が、世論の厳しい視線にさらされ、困惑していると報じた。米国3大ネットワークのABCもトップ級の扱いで伝えた。米CNBCは早速1時間番組で特集として扱うとの番宣を流している。

いっぽう運用の現場ではすでに、東京五輪中止を一つのシナリオとして織り込んでいる。五輪開催か中止か、どちらでも対応できる姿勢だ。筆者は、どちらの方向でも決まれば、市場の不透明感が払拭され日本株は買われる、とみる。ワクチン接種による経済回復をすでに織り込んだ米国株に比べ、接種周回遅れの日本株は割安との判断である。日本流にいえば「残り物に福」ということか。最もさめた見方としては、そもそも祝福されない五輪の経済効果は限定的ゆえ、期待感も薄いノンイベント(大したことがない出来事)との冷めたコメントもあった。

いずれにせよ、東京五輪を開催すべきか、中止すべきか。決断はタイムリミットに来ている。しかし、誰が決めて、どのように中止するのか手続きも不明なまま、開催2カ月前となった。

そのタイミングでの米疾病対策センター(CDC)と国務省による「日本への渡航中止勧告」は、菅義偉首相の立場を察したバイデン大統領流の助け舟との深読みも聞かれた。これで「外圧」により「断腸の思いで五輪断念」を語れるからだ。

日本の政治情勢に詳しい親日派のなかには、7月4日投開票の都議選を控え、小池百合子都知事にとっても、都民の反対の強い五輪中止を決断する格好の口実となるとの観測もあった。

日本の株式市場の視点では、米国株に比べ日本株の出遅れ傾向が顕著なゆえ、五輪中止となっても、悪いニュースはすでに織り込まれているとも考えられる。

総じて、五輪中止となっても、日本株市場がショック状態になることはなさそうだ。

豊島逸夫(としま・いつお)
豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
・業務窓口はitsuotoshima@nifty.com
  • 出版 : 日経BP
  • 価格 : 1,045円(税込み)

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