/

3月利上げ確率97%がはらむリスク

米金利先物の値動きから金融政策を予測する「Fedウオッチ」の3月利上げ確率が97%に達している。その内訳は、0.25%利上げが91.6%、0.5%利上げが5.4%となっている。0.5%利上げは、著名投資家ビル・アクマン氏が連休中にツイートして市場の話題になっている。「米連邦準備理事会(FRB)はインフレとの戦いで後手にまわり劣勢だ。ここは、0.5%幅の利上げで市場にショック効果を与え、インフレファイターとしての決意を示すデモンストレーション効果がある。2回目以降の利上げペースは穏やかにすることで、経済の痛みを和らげることができよう」との論旨だ。

さらに過激な発言もある。

米国を代表するバンカーであるJPモルガン・チェースのダイモン最高経営責任者(CEO)が、先週の同社決算発表の際に、2022年はインフレに伴う賃金増などを理由に、追い風より向かい風の方が強い環境になると語り、利上げ回数が6~7回になる可能性を示唆した。

ゴールドマン・サックスも18日の決算発表で、好業績をボーナスなど人件費増が足を引っ張る構図を明らかにした。能力ある人材を獲得して引き留めるためには報酬増が不可欠との説明である。

このような市場環境のなかで、政策金利に連動する2年債利回りと、将来の景況感を映す10年債利回りが、それぞれ1%と1.8%の大台を突破した。3月15~16日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)の2カ月前に3月の利上げが100%近く織り込まれた状況だ。その間には、1月25~26日開催のFOMCもある。こうなると、FOMC参加者のハト派的発言がリスクとして警戒されよう。すでに、ハト派主導格のブレイナード副議長候補(現FRB理事)は、先週、議会承認のための公聴会で見事なタカ派への転身を見せた。副議長候補でブレイナード氏の対抗馬とみられたデイリー・サンフランシスコ連銀総裁は「利上げ2~3回も考えられる。量的引き締め(QT)は、その後だ」と語っている。この程度でもいまやハト派的発言なのだ。しかし、3月FOMCまでに発表される雇用統計、消費者物価指数、小売売上高など重要経済指標の出方次第では、ハト派への回帰現象がみられるかもしれない。14日発表の12月米小売売上高は前月から1.9%減少した。新型コロナウイルスの変異型「オミクロン型」拡大で集客が低下している。今後発表される米経済統計は、オミクロン型の影響をより鮮明に映す数字となろう。

米株式市場が懸念するのは、イールドカーブの平たん化現象だ。3月利上げを織り込み2年債利回りが高止まりするなかで、将来の景況感が悪化して10年債利回りが反落すれば、長短金利差が縮小する。

いまや、このイールドカーブの斜度が、米株相場の予想変動率を示すVIX指数とともに、あるいは、それ以上に市場の注目を集めているのだ。

今週はすでに1月FOMCに向けて、高官らが政策に言及できないブラックアウト期間に入っているのでFOMC参加者の発言はないが、1月FOMC後には再び同参加者たちの発言が市場を揺らすことになろう。

なお、1月FOMCでの議論の中心は、QTの規模・開始時期となる。利上げとQTを同時進行させるのか、ラグ(時間差)を置くのか。FRB保有資産の適正規模は何兆ドル程度なのか。保有短期国債から償還後の残高自然減によるQTを開始することが、まずは現実的であろう。それでも過剰流動性相場ゆえ脚光を浴びてきた暗号資産(仮想通貨)、低格付け債(ハイイールド債)や特別買収目的会社(SPAC)などが、まず第一の衝撃波に見舞われそうだ。すでに予震のごとき兆しもみられる。

FOMCを控え、連休明けの市場には、常ならぬ緊張が漂っている。

豊島逸夫(としま・いつお)
豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
・業務窓口はitsuotoshima@nifty.com
  • 出版 : 日経BP
  • 価格 : 1,045円(税込み)

日経電子版マネー「豊島逸夫の金のつぶやき」でおなじみの筆者による日経マネームック最新刊です。

この書籍を購入する(ヘルプ):Amazon

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

セレクション

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン