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仮想通貨メルトダウン、生きるか死ぬか

暗号資産(仮想通貨)交換業大手のFTXトレーディングと投資会社アラメダの破綻は、他の仮想通貨会社への伝染と、当局の規制強化の段階に入った。たまたま、ニューヨーク(NY)市場で本件と接点をもつ人たちとのズーム会議に参加できたので、マーケットはどのように見ているのかまとめてみた。

先行きは暗い。米証券取引委員会(SEC)委員長のゲンスラー氏は、このように述べている。「(FTXは)顧客のマネーを集め、それを担保に借り入れトレーディングの原資としていた。時として、顧客に不利になる売買もあった」

顧客が預けたマネーの流用が確認されれば、一発レッドカードだ。

ゲンスラー委員長は、米マサチューセッツ工科大学(MIT)で仮想通貨の教べんをとっていた「プロ」である。当該業界の裏表を知っている人物だからこそ、不正行為には憤りを隠さず特に厳しい。

とはいえ、バハマ本拠の企業の精査となれば、一筋縄では行かぬ。

100万人を超すとされる債権者は、結果が出るまで忍耐を覚悟せねばならない。

そもそも中央銀行を信頼せず、独自の仮想通貨を創成したのだが、結果は、中央銀行からの救済も期待できない成り行きになった。

さらに、前例のない「トークン」が使われていることも精査を難しくしている。日本語で「電子証票」とされるが、欧米ではデジタル通貨の部類に入る。SECのゲンスラー氏は「有価証券」と認定している。米商品先物取引委員会(CFTC)は、仮想通貨ゆえコモディティーだと主張する。

かくしていまだルール整備されていないトークンをFTXは「FTT」と銘打ち大量に発行した。かつ、かなりの量のFTTを簿外取引でアラメダ口座に移した。取引所としてのFTXは、新仮想通貨をメニューに取り入れ積極的にトレーダーの売買を促した。ディスカウントで売ったり、100倍近いレバレッジをかける高リスクトレードも容認したりすることで売買高は急増。取引所の手数料収入も急増。アラメダ保有のFTTの価値も急騰。

FTX創始者や最優良顧客には、発行時にIPO株のごとく割り当てていた。FTXにはブラックロック、カナダ・オンタリオ州の年金基金、シンガポール政府系ファンド、そしてソフトバンクグループなども直接間接に出資したことで、社会的認知も高まった。

米有名スポーツ選手を「グローバル・アンバサダー」に指名して、派手なPR活動も展開した。FTXの若手最高経営責任者(CEO)サム・バンクマン・フリード氏はイニシャルを取り「SBF」と呼ばれ、環境問題についても発言して一躍若者のアイコン的存在にもなった。全ては、トークンFTTの上に成り立っていたのだ。

そのFTTへの信頼性が揺らぐキッカケになったのは、マクロ的視点では、利上げと量的引き締め(QT)。財務環境が一変すると財務基盤の脆弱性があらわになった。ライバル社のバイナンスが、いち早く保有FTTを売却することで同価格が急落。そこで、別名コーポレート・レイダー(乗っ取り屋)と呼ばれるバイナンス社CEOチャンポン・ジャオ氏(ニックネームはCZ)はFTX救済案を提示したが、数日後の撤回。そこから投資家のFTX社取り付け騒動が勃発した。トークン価格も暴落。レバレッジを掛けて売買していたトレーダーたちは追加証拠金が払えず、株や債券の換金売りに走った。FTX社もついに破産に追い込まれた。

市場ではマネー縮小の時代に入るや、SPAC(特別買収目的会社)の帝王と呼ばれた人物の破綻、英国年金危機、クレディスイスの財務不安など象徴的出来事が相次いでいた。次は、銀行監督官庁の目が行き届かぬシャドーバンク(影の銀行)か、簿外取引の類かと身構えていたが、仮想通貨破綻がその典型事例になってしまった。監督官庁の管轄外で、簿外取引でグループ企業でカネをまわすというFTXは、まさに市場の心配が杞憂(きゆう)ではなかったことを印象づけた。

冷ややかに見れば、過剰流動性相場で「なんでも上がる相場」の恩恵を享受した企業が今や罪滅ぼしの期間に入ったといえる。

仮想通貨市場規模は限定的ゆえ、世界を揺るがすシステミックリスクにはならないが、2008年に起きたリーマン・ショックと相似点もある。予期せぬところに、予期せぬタイミングで、監督官庁も捕捉できないリスクが顕在化したからだ。一時は中小破綻同業者の救済に当たったSBF氏は、リーマン・ショック時に米ベア・スターンズを救済買収したJPモルガンに例えられ、「仮想通貨業界のJPモルガン」とまで、持ち上げられた。

「FTXショック」は「仮想通貨市場のリーマン・ショック級」だが、実態は金融政策が転換すると生じるリスクの一例と見るべきであろう。

仮想通貨業界もこれで滅ぶことはないが、QTの時代に合った市場規模に縮小していくとみる。

豊島逸夫(としま・いつお)
豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
YouTube豊島逸夫チャンネル
・業務窓口はitsuotoshima@nifty.com

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