パウエル氏「変心」の実態、FOMCで明らかに
日本時間16日早朝に、12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果発表とパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長記者会見が行われる。
今回のFOMCのキーワードは「パウエル・ピボット(方針転換)」。
FRBが、金融政策の軸足を「雇用」から「物価」に移すことが示唆あるいは明示されることになろう。すでにパウエルFRB議長は、議会証言で「インフレは一時的という表現は撤回する」旨を明言した。
11月の失業率が4.2%まで低下したので、特に数値化されていないが、雇用目標の達成を前提として、長期化するインフレを封じ込める意図を明らかにすると見られる。
まずは量的緩和の縮小(テーパリング)。
現在はFRBの月間資産購入額を従来の1200億ドルから150億ドル減らし、1050億ドルに減額しているが、さらに踏み込み、減額幅を300億ドル程度に設定するとの見立てが有力だ。このペースでゆくと、2022年3月には量的緩和縮小が完了して、次のステップである利上げ決定に関して時間的にも余裕を残す。新型コロナウイルスの変異型「オミクロン型」の展開などに応じて、利上げ回数・利上げ幅を機動的に変えることができる。ここは、パウエル氏が、経済の視界不良を強調するであろう。すでに「インフレは22年後半には鎮静化するとの見方が一般的なようだが、予断は許さない」旨の議会発言で、FRBが海図なき航海を強いられている現状に言及している。供給網混乱はいずれ落ち着くとみられるが、人手不足は長期化必至の様相で、人件費のコストアップが消費者に転嫁される可能性がある。
市場は、米CNBCが30人の市場関係者を対象に行った事前調査によれば、22年6月に1回目の利上げが行われ、その後、22年後半に2回、23年にも3回、計6回の利上げを覚悟している。この利上げサイクルで、最終的には政策金利が2%台前半まで上昇することになる。
市場の懸念は、ドル長短金利差の縮小(イールドカーブの平たん化)だ。政策金利に連動する傾向がある米2年債利回りは上昇傾向だが、景況感を映す10年債利回りは上昇速度が鈍い。14日発表の11月の米卸売物価上昇率が年率10%に接近して過去最高水準に達したにもかかわらず、米10年債利回りは1.4%台にとどまる。政策金利が上昇して経済成長が減速するシナリオを映す現象と読めるのだ。ここは、パウエル議長が記者会見でいかに説明するか、注目される。
さらに、今回発表されるドットチャート(FOMC参加者らの政策金利見通し)も重要だ。22年に複数回の利上げを見込むタカ派の数が過半数に達する可能性がある。市場の利上げ予測との差が大きいと、どちらに収れんするのか、不透明要因として残ることになる。
なお、サプライズ要因としては、利上げの後に控えるFRB資産圧縮の可能性だ。量的緩和によりFRBの総資産額はパンデミック前の4兆ドル台から直近では8兆ドル台後半にまで膨張している。そこで、償還期を過ぎたFRB保有国債分の再購入はしないことで、FRB総資産の自然減を容認するのか。まだ、先の話とはいえ、記者会見で問われた場合のパウエル議長の答えが注目される。同氏は着任早々に、FRB資産圧縮は自然に任せる旨の発言で、市場を混乱させた苦い事例もあり、慎重にならざるを得まい。
FRBの新経済予測も含め、いつもより注目度が高いFOMCである。

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