2月米CPI、パウエル氏が歓迎するスーパーコアとは
14日に2月の米消費者物価指数(CPI)が発表になった。ヘッドライン年率6%(前年同月比上昇率)、コア5.5%(エネルギー・食品除く)。
筆者の注目は、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が最も注目している「住居費を除くサービス業」の価格動向であった。徹底的に最も頑固な労働集約的サービス産業に絞り込んだ指標なので、市場ではスーパーコアとも呼ばれる。パウエル氏は、7日の上院議会証言の冒頭で、消費者支出の半分以上を占めるスーパーコアに、ディスインフレーション(インフレ鈍化)の兆しが見られないと語っていた。2月1日の米連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見では、スーパーコアの部分だけを取り出せば4%程度と答えていた。それが、米個人消費支出(PCE)インフレ率から算出すると今回は3.7%まで下落したのだ。ここはパウエル議長が間違いなく歓迎するであろう。
とはいえ、CPIの3分の1ほどを占める住宅費が前月から0.8%、年率で8.1%も上昇したことは気になる。しかし、パウエル氏は、議会証言で、最近の賃貸契約動向を見るに、すでに頭打ちは明確で、今後、低下してゆくと予測している。そもそも、CPIは集計にも手間取るので遅行指標で6カ月ほどのラグがあるとされる。それゆえ、パウエル氏も上記の発言では「最近の賃貸契約動向」と先行的参考指標を引き合いに出していたのだ。史上最速利上げの効果は、これから本格的に出てくることが考えられる。
このシナリオを基にすれば、仮に21~22日の3月FOMC時に、市場の金融不安感が後退しつつあれば、3月の利上げ幅が0.25%となる展開が考えられる。
とはいえ、金融不安に関して、まだまだ楽観的にはなれない。
市場目線で要注意は、格付け機関の判断である。危機的状況のときに、引き金を引く役回りになりやすいからだ。
14日には、ムーディーズが、銀行セクターの見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げた。FRBの緊急融資を米財務省がバックストップする安全措置が発動されても、含み損を抱え、保護されない顧客もいる金融機関にはリスクが残るとしている。
かくして、FRBは、物価の安定と金融システムの安定の狭間に揺れる。市場のボラティリティー(変動率)も高まる。
14日のニューヨーク(NY)市場は、黒海空域でのロシア軍戦闘機と米空軍の無人偵察機の衝突の第一報が日中に入るや、それまで400ドル以上上げていたダウ工業株30種平均が、瞬時に急落。しかし、引けにかけ、空売りポジションが買い戻され、336ドル高で終えた。一時は「暗黒の火曜日か」と言われるほど緊張感が高まった。
今晩は、米卸売物価指数(PPI)の発表が控える。

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