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注目の議会公聴会、パウエル氏作戦勝ち 市場は安堵

今週のメインイベントとして市場が重視したパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長指名承認のための公聴会。結果は、金融リテラシーのレベルがばらつく質問者の議員たちに、粛々と対応したパウエル議長の作戦勝ちとなった。米国の主要株価指数(ダウ、S&P500、ナスダック)が、公聴会開始前の前日比マイナス圏から公聴会中にプラス圏に転じたので、明確な判定勝ちと言える。

パウエル氏は、市場が懸念する2つのシナリオを念頭に、慎重に言葉を選びつつ答弁した。

そのリスクシナリオとは、まず、金融政策転換のタイミングが後手後手に回り、インフレ傾向が定着してから、慌てて、利上げと資産圧縮を加速させる展開。

もうひとつは、そのタイミングが前のめり気味に早すぎて、ディスインフレ傾向が顕在化するケース。

実は、パウエル氏は、議長就任後に、資産圧縮のタイミングに関して「自動操縦」と語り市場を混乱させた苦い経験もある。

そこで、今回は、「自動操縦」ではなく、新型コロナウイルスの変異型「オミクロン型」などで目まぐるしく変化する経済環境に臨機応変の姿勢で対応することを強調した。これまでパウエル氏が好んで使う単語が「忍耐強く=patient」であったが、今回は、「機敏に=nimble」という単語を用いた。

利上げ回数や、資産圧縮の具体的予定に関しては、「検討中だが、今後の情勢を見極め決める」姿勢を強調していた。特に具体的にコミットはしていない。コロナ由来のインフレを当初は一時的と語ったことは、判断ミスと率直に(あるいはアッサリと)認めている。

基本的に「コロナ要因が最も重要」と見なし、医療専門家と常に話し合い、情報収集に努めているとも語った。

議員たちとの個別の根回しも入念に行ったようで、数名の議員から「先日はわざわざ丁寧に説明していただいた」との謝辞が述べられた。

いっぽう、上院民主党議員の4人ほどが、パウエル議長(共和党員)指名に反対票を入れると見られている。その筆頭格が急進左派のウォーレン上院議員で、同議員の質問中は、さすがにパウエル議長も表情が強張っていた。とはいえ共和党議員の超党派支持も得られているので、当確といえる。

筆者の注目は、米連邦公開市場委員会(FOMC)参加の高官たちによる個人的株式投資の件であった。公聴会直前にはクラリダ副議長の個人的株式売買の事例があらたに発覚して、予定より2週間早く辞任となった。この事例は、コロナ有事対応で、FRBの大型金融支援策が決定された時期の前後に個人的に株を売買。さらに、内部報告を修正したことも明らかになり、クラリダ氏が辞任に追い込まれた。パウエル議長の右腕とも呼ばれた人物だけに注視されたのだが、結果的には、根回しが効いたのか、「きつくしかりおく」程度で厳しい追及は免れた。内部倫理規定を大幅に改訂するとのことである。

なお、パウエル議長公聴会を視野に、FOMCメンバーの地区連銀総裁たちが11日にも相次いで自説を語った。

今年のFOMCでの投票権を持つクリーブランド連銀メスター総裁(タカ派)とアトランタ連銀ボスティック総裁(投票権なし)は、3月利上げを支持。カンザスシティー連銀ジョージ総裁(投票権あり、タカ派)は、資産圧縮を優先して急ぐべし、と語った。これら地区連銀総裁の発言により、FOMC内部がタカ派寄りにピボット(転換)していることが、パウエル議長が語らずとも伝わってくる。

結局、冒頭に述べた2つのリスクシナリオが払拭されたわけではないが、想定外のサプライズもなく、パウエル議長がそつなく乗り切り、市場は安堵したのだ。

豊島逸夫(としま・いつお)
豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
・業務窓口はitsuotoshima@nifty.com
  • 出版 : 日経BP
  • 価格 : 1,045円(税込み)

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