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1ドル=144円、為替介入が無理筋な理由

(更新)

米国のレーバーデー連休が終わり、ニューヨーク(NY)市場もいよいよ秋相場入りだ。

株価が読みにくいので、「ローリスク、ハイリターン」のトレードとして円売りが週明けから注目を浴びている。1ドル=144円台まで円安が進んでいる。これまで日本や円に興味も示さなかった外国人投資家層までが、噂を聞きつけ、大挙、新規参入あるいは参入を検討中だ。売りが売りを呼ぶ連鎖の様相である。

「ローリスク」と判断されるのは、日銀と財務省は動けず、との認識が共有されているからだ。特に、140円台になると、為替介入リスクが話題になるのだが、日銀・財務省に勝ち目はないと見切られている。米インターコンチネンタル取引所(ICE)が算出する主要通貨に対するドルの総合的な強さを示す「ドルインデックス」は110台まで上昇。世界的ドル高傾向に逆らって日銀・財務省が単独で円買い・ドル売りに走っても、限界がある。さらに今回は、欧州中央銀行(ECB)の大幅利上げを視野に、対ドルでの投機的ユーロ売りも同時進行している。円売りを制限すれば、ユーロ売りに飛び火の勢いが加速する。ここは日米欧など主要中銀の協調が必要となろう。しかも、寄り合い所帯で難題山積のECBは、内部の意見統一に手間取りがちだ。

マクロの視点でも、今回ばかりは、これまでの「介入の常識」が通用しない。新型コロナウイルス対応で未曽有の規模のマネーがばらまかれ、外為市場にも大量流入。レバレッジも含めマーケットの流動性が桁違いに増加しているからだ。

さらに、前回2011年の為替介入から10年余りの期間に生じた外為市場の構造変化も見逃せない。NY市場では高速売買が一般化した。外為投資層も個人「共闘買い」で名を馳(は)せたレディットマネー層から富裕層まで新規参入者が急増した。

暗号資産(仮想通貨)売買や新規上場で機関投資家並みの資産規模を持つ個人投資家も少なくない。原資は親の持つテキサスの大牧場を売却して得た、という事例が印象的であった。ウォール街離れの傾向も目立つ。筆者は、NYマンハッタンの古い貸しビルや、郊外の大きな住宅に大型コンピューターを据え付け、数人の若者を雇い、通貨投機を仕掛ける人たちに会ったことがある。真夏だったが、機材保護のため、フロアは寒かった。そこでは、日本についての知見はほとんど持たず、直接会った日本人市場関係者も筆者が初めてという人たちが、円を売買していた。

為替介入は、もぐらたたき、あるいは、藪蛇(やぶへび)となるリスクをはらむ。

豊島逸夫(としま・いつお)
豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
・業務窓口はitsuotoshima@nifty.com
  • 出版 : 日経BP
  • 価格 : 1,045円(税込み)

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