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今年のジャクソンホールが特に注目される理由

米カンザスシティー連銀主催で8月に米西部ワイオミング州の避暑地ジャクソンホールで開催される国際経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」には主要国の金融当局トップが集結する。昨年はリモート形式での開催であったが、今年は8月25~27日の日程で対面形式に戻るようだ。

過去にはジャクソンホール会議が重要な金融政策決定の根回しの場となった。避暑地でネクタイ、スーツ姿からカジュアルウエアに着替えた中央銀行高官たちは、舞台裏で本音を語り合い、メディアもインタビュー取材に走り回る。

今年のジャクソンホールが特に注目されるのは、米連邦準備理事会(FRB)の利上げプログラムのなかで、5月、6月、7月の連続0.5%利上げを実行した場合、9月に「点検」が行われるが、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げの可能性が、0.5%か0.25%か、はたまた利上げ見送りか、様々な予測が市場内に乱れ飛んでいるからだ。

FOMC参加者であるFRB高官たちの意見も割れている。FRBのパウエル議長は「金融政策は切れ味が鈍い」と政策効果のタイムラグと測定の難しさを語ってきた。かねて根回しには時間を惜しまないとされるパウエル氏が、FOMC内部の亀裂を埋めるためには8月開催のジャクソンホール会議は格好の場となりそうだ。

過去の事例でも、ロシア財政危機と大手ヘッジファンド、ロングターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)の破綻で市場が揺れた1998年に、ジャクソンホール会議で当時のFRBグリーンスパン議長がFRB高官たちと気楽な姿と環境で本音を語り合い、意見調整を行った。その結果、9月の利下げを実行したことは、いまだに米国の「Fed(中銀)ウオッチャー」の間で語り草になっている。

そもそも今年は、利上げ幅が0.25%、0.5%さらに0.75%、あるいは利上げ見送りと政策選択肢が割れる。過去に例をみない状況だ。

しかも今年は後世の教科書に残る経済環境だ。ウクライナ情勢と新型コロナウイルス禍の影響で新型インフレが勃発し、FRBは金融政策の超緩和から超引き締めへ短期間での急転換を強いられている。その影響は主要国の中央銀行も直撃する。舞台裏では激論が展開されそうだ。

ニューヨーク市場でも、今年の夏休みは家族と「リベンジ旅行」を予定するが早々に切り上げ、ジャクソンホール会議に対応せねばならず、家庭内では不評だと嘆く市場関係者のつぶやきが印象的だ。

豊島逸夫(としま・いつお)
豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
・業務窓口はitsuotoshima@nifty.com
  • 出版 : 日経BP
  • 価格 : 1,045円(税込み)

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