/

「利上げ5回説」「押し目は買い」割れる市場の見解

日本の連休中、米国市場では、12月の雇用統計を受け、金融政策に関する様々な議論が噴出した。

まず、ダドリー前ニューヨーク(NY)連銀総裁が、米経済テレビで、米連邦準備理事会(FRB)を公然と批判した。「FRBの見方は現実離れしていて甘い。12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)後に発表されたFRB経済予測では、2024年のインフレ率予測中心値は2.1%なのに、同年の政策金利(FFレート)予測中心値も2.1%。これは彼らが景気に中立的と見る金利水準である2.5%を下回る水準だ。この程度の金融引き締めで、インフレが魔法のごとく消え去ると本気で思っているのか。現FRBの人たちからの批判は覚悟のうえだ」

ダドリー氏といえば、FOMCではハト派の筆頭格であった。NY連銀は、他の地区連銀と異なり、常任でFOMC投票権を与えられる特別扱いで、オピニオンリーダーの役割も果たしている。それゆえに前総裁の意見とはいえ、ウォール街でも話題になるのだ。22年の利上げ回数についても聞かれ、年内4回か5回で、毎FOMCごとに連続利上げの局面もあろう、と答えている。

JPモルガン・チェースのダイモン最高経営責任者(CEO)もテレビインタビューで「インフレが想定より悪化して、利上げ回数も想定より増える可能性がある。個人的には年4回だけなら驚きだ」と語った。同氏は、特に消費者のバランスシートが改善して消費が極めて旺盛であることに時間を割いて力説した。「運がよければ、FRBはソフトランディング(軟着陸)を実現できよう。しかし、紆余(うよ)曲折あり、ボラティリティー(価格変動性)は激しくなろう」とも警告している。

ところが、同社アナリストのコラノビッチ氏が率いるチームは、市場内のFRBタカ派サプライズは「行き過ぎ」と断じ、「グロースからバリューへのローテーションを支える傾向ゆえ、押し目は買い」と推奨している。「金利上昇、恐れるべからず」との姿勢である。

ダイモン氏は、米国を代表するバンカーだが、その奔放な物言いは、時折舌禍事件を誘発してきた。昨年11月には「JPモルガン・チェースが中国共産党より長く存続するであろう」と語り、翌日には「あのような発言はすべきではなく後悔している」と発言を撤回している。

雇用統計後の論戦には、サマーズ元財務長官も参戦。今回の雇用統計で平均時給が前年同月比4.7%増加したことを重視して、労働市場は逼迫しており、インフレを冷やすことが必要と強調。FRBも市場もインフレについて楽観的すぎると警告した。

FOMC参加者の現役組からは、バーキン・リッチモンド連銀総裁が発言。今回の雇用統計発表後の見解として、3月利上げ予測を肯定した。非農業部門新規雇用者数が事前予測を大幅に下回ったものの、失業率が4%を割り込んだことがFRB内では重視されているようだ。

ただし、同氏は、労働参加率が低位にとどまり、いまだ350万人の労働者が労働市場への復帰をためらっていることを指摘。現状を「暫時完全雇用」と表現した。同氏はFOMC内で中道派とみられている。

かくして、官民で賛否両論は渦巻き、今週はパウエル議長議会承認のための公聴会が開催される。すでに、事前声明文は発表されているが、これには新味はない。議会での発言になると、あらためて「国民生活をインフレから守るため」など、ややポピュリスト気味とウォール街では評される。

なお、新型コロナウイルスの変異型であるオミクロン型の影響については、米国市場の一部に、NYなど東部大都市はピークを過ぎた感もあるとの見解が流れ始めているが、いまだ論じるのは時期尚早であろう。

豊島逸夫(としま・いつお)
豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
・業務窓口はitsuotoshima@nifty.com
  • 出版 : 日経BP
  • 価格 : 1,045円(税込み)

日経電子版マネー「豊島逸夫の金のつぶやき」でおなじみの筆者による日経マネームック最新刊です。

この書籍を購入する(ヘルプ):Amazon

初割ですべての記事が読み放題
今なら2カ月無料!

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン