次期日銀総裁 海外の反応、誰がなっても貧乏くじ
元米連邦準備理事会(FRB)議長のバーナンキ氏と前議長のイエレン氏が、ともに野に下って両者とも米ブルッキングス研究所に在籍していたころのこと。2人の壇上座談会で、イエレン氏が「バーナンキさんの非伝統的金融政策を受け継ぎ、私は、その出口である金融正常化の道筋をつける仕事をした。これは貧乏くじだった(英語でraw end of the deal)」と軽く冗談のように語ったが、目は笑っていなかった。カネばらまきの後始末の仕事人は、ときには悪役となりかねないものだ。
この1週間、ウォール街の人たちと、次期日銀総裁人事について、様々な角度から話し合ってきたが、本命の方が辞退されたという話になると、「貧乏くじをあえてひかなかったのか。賢明な判断かもしれない」というコメントがあった。
総じて、今回の人事については「誰が日銀総裁になっても同じ」という意見が目立つ。その理由は、日銀の金融政策の選択肢が限定的、ということに尽きる。日銀が計1%でも利上げしたら、金融・財政ショックを誘発するリスクがある。しかも、日本企業は、黒田流異次元緩和にすっかり慣れてしまったので、その一部をいじる(tweak)だけで、禁断症状を引き起こすリスクもある。超緩和の出口には円高が待ち受ける、との議論に関しても、誰が決めても、市場の反応が大きく異なるとも思えない。
さらに、日銀の巨額な上場投資信託(ETF)買いの出口については、誰が決めようと、妙案があるとは思えない、との意見が印象的であった。
なお、そもそも日銀次期総裁人事に話を向けると、日本経済について普段から考えたこともなく、興味もないので、なんと答えてよいか分からない、という事例も多かった。「すまん、分からない」で終わってしまう。
ちなみに、次期日銀総裁候補決定の現地報道だが、大手経済新聞で、トップ面には載らず、マーケット面の4番手の記事であった。
アナリストの一夜漬け的なコメントも目立った。
まともな議論ができたのは、セルサイド(証券業界)の日本株デスクや奥さんが日本人というような人物だけであった。
これが実態である。

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