アウェーの介入はもぐらたたき Xデーは11月2日か
ニューヨーク市場での日本の為替介入が、ウォール街では、どのように見られているか。最も印象的な表現がwhack-a-mole(もぐらたたき)だった。円売り投機家層の顔ぶれが多様化しているのだ。
一方、それほどまで市場介入しなくても、目先は実勢がドル安・円高に傾いている、との見立ても目立つ。
来週11月1~2日には、いよいよ11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催される。既にブラックアウト期間(FOMC前に参加者が公的発言を控える時期)に入った。米連邦準備理事会(FRB)高官発言の推移を重要視してきた市場は、暗中模索の状態だ。前地区連銀総裁などFOMC体験者たちがメディアに担ぎ出される。今や自由な身のゆえか、大胆な発言も見られ、市場は神経質になりがちだ。
市場が最も注目するポイントはもちろん利上げ。11月は0.75%の引き上げがほぼ確実視されている。問題は、12月の上げ幅だ。0.75%か0.5%か0.25%か。連続0.75%実施の見立てが多く、市場も織り込みに入ったところで、一部のFOMC参加者らから、慎重論が出始めた。ブラックアウト入り直前に、最後のFRB高官発言となったデイリー・サンフランシスコ連銀総裁の講演が、その最たる例だ。
「政策当局者が利上げ幅の縮小を計画し始めるべきだが、まだ大幅利上げから一歩下がる時期ではない」
「市場で織り込まれているはずの0.75%の再利上げとなる可能性はありそうだが、いつまでも0.75%だという考えに固執しないほうがよいと勧めたい」
同氏は、ブレイナードFRB副議長が指名される際に、対抗馬として名前が挙がったほどの人物で、ハト派の代表格でもあった。講演はタカ派に急傾斜するFRB内部に一石を投じたといえる。他のFOMC参加者からの反論も聞きたかったところだったが、ブラックアウト期間入りした。こうなると、市場は揺れる。
株式市場は、目の敵にしている利上げ観測が多少なりとも緩和されれば、それだけで十分な買いの理由となる。
外為市場では、連続0.75%利上げを前提としてドルインデックスが一時は114前後まで上昇したところで、待ったが入り、現在は111台。ドル買い・円売りの人気トレードは自律反転モードになった。そこに、追い打ちをかけるように日本から為替介入が入った。筆者は、投機筋にお灸(きゅう)をすえるにはタイムリーな介入と見たが、ウォール街では、「わざわざ出張介入せずとも、実勢でドル安に動いていたのに」と冷ややかな見解が聞かれる。
いずれにせよ、FOMC後の記者会見でパウエル議長が12月利上げについての質問に答える可能性がある11月2日が、為替介入側にはXデーとなろう。仮に、12月以降の利上げ減速が語られれば、「ドカ雪」のごとく積み上がったドル買い・円売りポジションが表層雪崩をおこす可能性がある。介入当局は、高みの見物となろう。
逆に、12月も0.75%のシナリオとなれば、一転、介入当局にとって正念場となる。ニューヨーク市場でさらに強まるドル買いの荒波に、どこまで抗することができるか。
なお、今週金曜日28日には、FRBが最も重視するインフレ指標であるPCEコアインフレ率が発表される。前回は年率4.9%だったが、今回の事前予測には5.2%という数字なども見受けられる。FOMC直前の前哨戦も無視できず、介入当局の臨戦態勢は続く。

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