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NY株価の乱、ゼロ金利しか知らない世代が動揺

米連邦公開市場委員会(FOMC)前夜ともいえる24日のニューヨーク(NY)株式市場では、3指数がまれにみる大変動を演じた。

ダウ工業株30種平均が一時1100ドル超、急落したときは、百戦錬磨のツワモノたちのZoom(ズーム)画面に映る顔もさすがに青ざめ、言葉少なになっていた。その後、前日比プラス圏まで切り返す急反騰局面では、ハッピーとか安堵とかいうよりあっけにとられた様子であった。普段なら見事に後講釈を語ってくれるベテラン、アナリスト氏も想定外の展開に寡黙であった。

このような荒い値動きを繰り返していると、新型コロナウイルス下の自粛期間中に増えた個人投資家たちも恐れて逃げてしまうだろう。

今のNY市場最前線で働くトレーダーたちを見ても、社会に出たとき既にゼロ金利だったという世代が多い。いきなり金利がプラス0.25%になると聞いただけで、重いハンディを背負った気分になるようだ。

例えば商品トレーダーが原油を買うための社内ドル資金調達金利が0.25%上がるということは、今後0.25%分のリターンを常にあげなければならない。大きな金額を扱うプロにとって、「25ベーシスポイント・プラス」は強いプレッシャーとなる。こればかりは体験した者でなくては分かるまい。

まして利上げが年4回とか、0.5%刻みの可能性などを意識すると、すくんでしまうようだ。こうなると短期売買回転で稼ぎをもくろむようになり、日中のボラティリティー(価格変動)はますます激しくなろう。しかも、市中にあふれる過剰流動性が年内にも米連邦準備理事会(FRB)により徐々に吸い上げられる可能性もある。利上げと量的引き締め(QT)が同時進行するケースも、史上初の体験となる。未体験ゾーンに挑むときは、スタートの号砲が鳴る前に最も緊張感が高まるものだ。

恐怖指数の米変動性指数(VIX)24日のチャートを見ても、28から瞬間的に38まで急騰後、急反落した結果、絵に描いたような「上ヒゲ」になっている。40前後になれば「危機水準」とされるので、市場の動揺がにじむ。

救いはドル実質金利がマイナス圏にとどまるので、リスク資産には追い風が吹き続けることか。

24日の「ジェットコースター相場」をFOMC直後に備えた予行演習と見れば、本番の反応も限定的になるかもしれない。

筆者が気になるのは、24日英IHSマークイット発表の1月米国購買担当者景気指数(PMI、総合)速報値が50.8と1年半ぶりの低水準をつけたことだ。既に2021年12月の米小売売上高は1.9%減、22年1月のニューヨーク連銀製造業景況指数もマイナス0.7へ大幅低下している。米雇用統計も失業率こそ改善したが、非農業部門新規雇用者数と労働参加率には失望感が漂う。

それでも利上げ見切り発車となるのか。パウエル議長の背後には、中間選挙前にインフレ退治を急ぐバイデン大統領の姿がちらつく。24日のNY市場で頻繁に議論されたことが「パウエル氏の判断ミス」というテーマであった。メディアではウクライナ地政学的リスクが頻繁に語られるが、これははっきりいってニューヨークから距離感がある。

まれにみる一日の米株価大変動を誘発した最大の要因は米金融政策の転換だ。ブリンケン国務長官が記者会見を開いても市場は傍観気味だが、イエレン財務長官、ましてやパウエル議長記者会見となれば、通常番組を中断して臨時中継する経済系テレビの画面に市場の目はくぎ付けになろう。地政学的リスクの影響は一過性になりがちだが、金利はジワリ、ボディーブローのごとく効くものだ。

かくして、24日の米株式市場の異変は市場のパラダイムシフトの一幕とみられているのだ。

豊島逸夫(としま・いつお)
豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
・業務窓口はitsuotoshima@nifty.com
  • 出版 : 日経BP
  • 価格 : 1,045円(税込み)

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