円売り仕掛ける海外集団 「日銀は永遠のハト派」
「黒田日銀総裁は、緩和政策を誓う。輸入物価上昇の経済への打撃を懸念」
ロイター通信が日本時間13日午後、世界に流した記事の見出しである。
第3波、第4波の円売り攻撃を仕掛けるタイミングを虎視眈々(たんたん)と狙っていた海外通貨投機筋は、渡りに船とばかりに即動いた。アジア時間から欧州時間へバトンタッチされる時間帯で、商いも薄く、相場も動かしやすい。しかも、本欄で繰り返し伝えてきたように、2021年10月の時点から、円売りの波状攻撃を繰り返し、連戦連勝。じっくり次のタイミングを待つ余裕もあった。
いわゆる「海外通貨投機筋」も二手に分かれる。
まず、超短期売買で差益を狙うCTA系ヘッジファンドが先陣を切る。その次に控えるのがグローバルマクロ系ヘッジファンド。中期の世界経済・政治情勢を読み動く。彼らは、日本の資源輸入依存と日銀の金融政策選択肢が緩和継続に限定されることを見抜き、じっくり腰を据え円売りポジションを増やしている。
日銀が初めて打ってきた「連続指し値オペ」という名の金利抑え込み策も「円安覚悟の窮余の一策」と解釈された。結果的に、1ドル=115円から126円まで円安を進行させた主導役となったのだ。今や日本株のみならず円相場もプレーヤーは外国人主流。日本人市場関係者は、もっぱら解説役に回っている。
さらに、外為市場ではドルインデックスが100の大台を突破して、ドル高一色の様相だ。この世界の流れに日銀が円買い・ドル売り介入を実施しても、成功確率は低いことも見抜かれている。125円近辺とされた「黒田ライン」はスルーされた。バイデン米政権も、ウクライナ戦争とインフレ対応に傾注を余儀なくされ、自国通貨安競争・為替監視まで目配りの余裕はない。ロシア・中国に対し、日米の結束が揺れるごとき言動は控えねばならない。
かくして国際通貨投機筋が円安で大もうけの話は市場内に拡散され、これまで円には興味もなく、日本経済の知見も薄いヘッジファンドまで参入を開始してきた。ドル円通貨ペアが最も混み合うトレードになる兆しもみえる。0.5%幅の連続利上げも予想される5月と6月米連邦公開市場委員会(FOMC)までが、円安トレードの最も「おいしい」賞味期限ともみられる。
その間に130円突破の可能性もあるが、見切りも逃げ足も速いマネーなので、短期的に4~5円の幅で巻き戻しも起きる可能性がある。125円を超える円安水準は現役市場参加者にとって「未知の海域」でもあるので、ボラティリティー(価格変動)は大きくなりそうだ。
「日銀は永遠のハト派」「サンキュー、ミスタークロダ」との声も引き続き聞こえてくる。日銀とヘッジファンドのせめぎ合いも続きそうだ。

・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
・業務窓口はitsuotoshima@nifty.com
- 出版 : 日経BP
- 価格 : 1,045円(税込み)
日経電子版マネー「豊島逸夫の金のつぶやき」でおなじみの筆者による日経マネームック最新刊です。
関連企業・業界