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FOMC後、株価急反発の理由

米株価は米連邦公開市場委員会(FOMC)後のパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の記者会見中に上昇に転じ、結局ダウ工業株30種平均は518ドル高で引けた。

利上げ7回というFOMCのタカ派姿勢にもかかわらず、株価が上昇したのはなぜか。

中央銀行には「建設的曖昧さ=constructive ambiguity」という戦術がある。意図的に曖昧な発言により難局を切り抜ける、という意味だ。

例えば、今回、年内利上げ7回が決定されたわけではない。FOMC参加者が予測する2022年末金利水準の中央値が0.25%刻みで7回分に相当するということだ。パウエル氏も述べているように、金融政策の決定事ではない。

さらにパウエル氏は、「全てのFOMC会合がライブである」と、従来の発言を繰り返した。データ次第、地政学的リスク次第で、利上げの有無を各会合ごとに決めてゆく、という姿勢である。「ウクライナ情勢は不透明」とも述べている。nimble(=機動的)に対応するという表現も、最近のパウエル氏は好んで使う。

結局、今回のFOMCで決まったのは、0.25%利上げ1回ということだけだ。

さらに、ブラード・セントルイス連銀総裁が0.5%利上げを主張して反対意見を述べたことも記されている。同じくタカ派の、メスター・クリーブランド連銀総裁とジョージ・カンザスシティー連銀総裁も、より強い引き締めを論じた可能性がある。例えば、メスター氏は、FRB保有資産の圧縮に関して、住宅担保債券(MBS)の一部を売却し、FRB保有資産の構成を米国債を中心にすべきだ、と具体的に語っていた。しかし、資産圧縮関連は次回にまわされた。

まとめ役のパウエル議長は、FOMC内部のハト派とタカ派の調整役にまわり、建設的曖昧さに徹した可能性もある。同氏は、議会公聴会の前にも、個々の議員たちと、こまめに根回しをしたことが、質問側の議員たちの発言からも確認された。「先日は、ご丁寧な説明に感謝します」などの謝辞がしばしば聞かれた。

この建設的曖昧さは、市場の視点では、執行猶予つきの引き締め発言と受け止められる。年内7回利上げとの「判決」だが、情状酌量の余地も残す。

その結果、17日の米株式市場は、ウクライナとロシアの和平交渉進展への期待と中国政府が金融市場安定を重視するとの姿勢を歓迎して、FOMC前の上昇基調に戻ることになったわけだ。

それゆえ、FOMC後の米国株上昇の賞味期限は限定的である。

多くのファンドは、依然、ポートフォリオのリスクを減らしたままで、有事対応を決め込んでいる。

豊島逸夫(としま・いつお)
豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
・業務窓口はitsuotoshima@nifty.com
  • 出版 : 日経BP
  • 価格 : 1,045円(税込み)

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