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超円安トレンドの終着駅と時期は?NY市場の視点

永遠に上げ続ける相場もなければ下げ続ける相場もない。これだけは確かなことだ。では、現状の超円安トレンドはいつごろまで続くのか。

そのヒントを求めて、米金融政策を予測するFEDウオッチャーと円売り仕掛け人のヘッジファンドが同席する珍しいZoom(ズーム)会議に参加してみた。

結論から言うと10~12月期、場合によっては、2023年1月まで円安圧力は強いが、その後は米連邦準備理事会(FRB)も利上げ効果点検の時期に入る可能性が強い。

米連邦公開市場委員会(FOMC)のなかでも最も強いタカ派であるブラード・セントルイス連銀総裁も、まずやるべき利上げをしっかり実行して、その後はインフレ動向を見守る姿勢だ。フロントローディング(強力な利上げを先行させる)の後はwait-and-see(待って見守る)、と語っている。ドル高については、「いつまでも今の状況(ドル高)が続くわけでもなかろう」「ドルが別の動きをするかもしれない」としている。

ただし、そのフロントローディングの期間は、現在想定されている以上の利上げも辞さぬ構えだ。11月に続き12月FOMCでも0.75%の利上げ。場合によっては23年1月FOMCでも0.25%程度の利上げの可能性がある。その場合、今回の利上げの終着駅は5%近くに達するかもしれない。現在の市場はここまで織り込んでいないが、実際に5%という数字が市場内でそろそろ出始めたので、その織り込みの過程で1ドル=150円をさらに超える円安局面も十分に考えられる。

ちなみに9月FOMCの時点では、利上げの終着駅は4%台前半が予想中心値であった。

振り返れば、21年12月のドットチャートでは、22年末政策金利が1%以下と予想されていた。それが、22年3月、6月、9月の期間に、2%、3%そして4%台と切り上がってきた。要はドットチャートは外れ続きなのだ。12月に5%近くになっても、現状のインフレ率を見るに、全く不思議ではない。

マーケットでも、政策金利に連動する2年債利回りが4.55%前後まで上がってきた。今年の傾向としては、市場が先行して利上げを見込み、FRBがそれを追認するごとき展開が目立つ。パウエルFRB議長も「我々が語る前に、マーケットが動く」と語っている。

そして、ここからが本論なのだが、強硬利上げの副作用として景気後退あるいはリセッション入りのシナリオが経済統計により確認されたところで、FRBは利上げ停止を宣言、さらに利下げへ政策転換(ピボット)する可能性が強い。このシナリオは既に市場内でも議論されてきたことだが、フロントローディングの時期が徐々に定まってくると、現実味が増すシナリオになってきた。

それゆえ、為替介入も無理に実行する必要もなかろう。現時点で世界のドル高の流れに逆行する介入がいかに無力かは、当局が前回の介入で最も強く感じたはずだ。ここは無駄玉は撃たず、実勢に任せることが賢明ではないか。

実は、投機筋も強腰だが内心は戦々恐々。虎視眈々(たんたん)と円売りの出口を模索しているのだ。所詮、短期売買の差益を追求する投機家集団だ。逃げ足も速い。

ただし、FRBは高い金利水準を長く続ける(higher,longer)ことで、民間のインフレマインドが定着する事態は絶対に許容しない方針だ。1ドル=140円台後半の円安は、少なくも23年半ばまで続くリスクは覚悟すべきであろう。

なお、FRBのミッションには「市場の安定」もある。

英国発の国債利回り急騰リスクは、一服したが、減税撤廃・緊縮財政とインフレ対策の利上げという厳しいポリシーミックスの痛みは、特に英国人の低所得者層を直撃する。英年金の窮状に、米国・ドイツ・フランスでも、自国の年金運用について危機感を抱き始めた。年金運用リスクが顕在化すると、投資マネーが市場から撤退して、流動性が減少。資産価格は大きく振れやすくなる。仮にシステミックリスクが懸念される事態ともなれば、中央銀行も救済的金融緩和に追い込まれる。

英イングランド銀行の量的緩和一時再開は、その最たる事例だ。米国市場でも既に、短期金融市場での流動性不安が懸念されている。パウエル氏は短期金融市場での資金オペと量的緩和は全く異次元と断じているが、市場は必ずしも納得していない。

円安については、単に日米金融政策の違いだけではなく、市場の安定性についても目配りが必要である。

豊島逸夫(としま・いつお)
豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
YouTube豊島逸夫チャンネル
・業務窓口はitsuotoshima@nifty.com

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