注目のパウエル氏発言、3・5・6月米利上げ継続か
市場が注目した7日のパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長発言は、聞き慣れた説明の繰り返しで特に新鮮味がなかった。とはいえ、同じ発言でもまれに見る雇用統計の上振れを見せつけられた直後では、市場関係者の心にぐさりと刺さるものがある。政策金利5%など到底できるものではなく、年内にも利下げ転換を強いられよう、とのマーケットの読みは外れたようだ。
今や、FRB側の予想到達金利は5%台半ばに上昇しそうだ。既にカシュカリ・ミネアポリス連銀総裁は、7日のパウエル氏発言前に、テレビ生出演で5.4%と明示した。総じて、これまでの「5%をやや上回る水準」から0.25%刻みの利上げで、もう一回分は上昇してきている。米連邦公開市場委員会(FOMC)3月、5月、そして6月も0.25%利上げとのシナリオが現実味を帯びてきた。
さらに、年後半は過去最速利上げの効果点検の時期となり、場合によっては2024年まで5%台半ばの金利水準が維持される可能性がある。金融政策効果の発現には12〜18カ月程度のタイムラグがあるとされているが、その間に今回の雇用統計のような大きな振れが再度あれば利上げ継続期間の予測はますます困難になる。
市場側の到達金利予測も、FRB側に屈するかたちで「5%に達せず」から「5%超え」に変わった。10年債利回りは3.67%水準、2年債利回りは4.46%水準まで反騰してきた。不況のシグナルとされる逆イールド幅も0.8%前後とエスカレートしている。FRBの強行利上げにより、景況感が悪化するシナリオを映す現象だ。
とはいえ、7日の米国株は反発している。1月雇用統計の上振れを素直に良い材料として捉え、ソフトランディング(経済の軟着陸)は可能との読みが目立つ。ただし、株高が続くと市場環境の逼迫感が弱まり、FRBの引き締め不足と解釈されるリスクもある。
総じて、悲観論で育つ債券市場と、楽観論で育つ株式市場の違いが鮮明だ。
なお、日本側が気になるドル円相場だが、今回の1ドル=128円台から132円台への円安進行のプロセスで、圧倒的に米雇用統計の影響が日銀総裁人事という材料を上回った。日銀総裁が誰になろうと、ドル円を大きく動かすのはFRBの金融政策であるとニューヨーク(NY)市場は認識している。その背景には、日銀の金融政策の選択肢は限定的との読みが見え隠れする。
23年もまだ2月に入ったばかり。これから毎月、雇用統計と消費者物価指数(CPI)発表などの重要指標をFRBも市場もこなしてゆかねばならぬ。野球に例えれば、いまだ1回裏が終わったばかりである。

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