/

平均回帰のVIX VIX先物ETFは中長期減価で償還予定

投信観測所

米国の株式相場が変調をきたすたびに注目度が上がる指標の「VIX」。そのVIXに関連した投資信託の代表格が、三菱UFJ国際投信が運用する上場投資信託(ETF)の「国際のETF VIX短期先物指数」だ。

2010年12月設定の同ETFは純資産残高が396億円(2022年8月末時点)あり、東証での売買も活発な部類に入る。そんなETFについて、三菱UFJ国際投信は繰り上げ償還して上場廃止にする(24年2月を予定)手続きを23年11月に開始すると発表。同ETFの「中長期的な減価特性」を理由に挙げている。

中長期的な減価とはどういうことか。同ETFが組み入れているVIX先物の価格特性に起因する。

VIXは1カ月後までのリスク予測値

VIXは「Volatility Index(ボラティリティー指数)」の略称。ボラティリティーとは金融商品の値動きの不確実性を示す指標のことで、一般には価格変動リスクや標準偏差と呼ばれる。VIXは米国株を対象にした指数で、投資家が株式相場の先行きの振れ幅をどれくらいと見込んでいるかを示す。

VIXは「恐怖指数」の異名を持つ。株式市場の混乱期には投資家の先行き不安心理(恐怖感)が増幅する形で、VIXが跳ね上がることが多いのに由来する。

価格変動リスクは通常、過去の値動きを基にした実績値だが、これに対し、VIXは価格変動リスクの今後の予測値という違いがある。具体的には、米S&P500種株価指数が1カ月(30日)後までに最大どの程度上下に変動する可能性があるか、その確率を数値化した指標だ。

VIXの実際の数値は、米シカゴ・オプション取引所(CBOE)で売買されているS&P500オプションの価格を基に算出している。VIXの単位はポイントだが、実質的な単位は、一般の価格変動リスクと同様に年率換算した%の意味を持つ。

例えば、仮にVIX=20%とすると、約7割の確率でS&P500指数が現在の水準から1カ月後までに上下に最大5.8%変動すると予想していることを示す。

この際、年率の20%を1カ月あたりに換算するための投資理論上の決まりから、20%を12(1年=12カ月)の平方根(ルート)で割って求める。これは投信の基準価格がランダム(不規則)に変動するという「ランダムウォーク理論」に基づくと、価格変動リスクを2乗した「分散」と呼ぶ指標が投資期間の長さに比例して大きくなるためだ。

20年3月中旬にはコロナショックを受けて、VIXが約83%の高値をつけた。この時は、1カ月後までの上下へのブレ幅が最大で24%程度になると予想していたことになる。

平均回帰がVIXの大きな特性

ただVIXは、あくまでS&P500指数がどの程度「上下に」変動する可能性があるかを示す予測値であり、株式相場の「方向性」を占う指標ではない点に注意したい。VIXが上がったからといって今後必ずS&P500が下落するわけではないし、下がったからといってS&P500が上昇するとは限らない。

VIXの大きな特性の一つに「平均への回帰」がある。VIXに限らず、価格変動リスクは上がり続けることもなければ、下がり続けることもない特性を持ち、VIXは傾向的に平均値(20%前後)の上下で変動を繰り返している。

実際、VIXの長期推移を見ると、株式相場の安定期には低位で推移し続けるが、何かのきっかけで株式相場が急落したとたんに一気に急騰し、その後、タイミングは様々だが平均に向けて低下し始めるといった値動きが見られる(グラフA)。

VIX先物ETFは中長期に減価

VIXを金融商品として直接売買することは一般にできない。株式の裏付けを有する株価指数とは異なり、単なる計算数値にすぎないからだ。そのため、同ETFはVIXの値動きを予想して取引するVIX先物を組み入れて運用し、VIX先物価格をベースにした指数(円換算)への連動を目指す。

注意しなければならないのは、VIXとVIX先物ETFの値動きは大きく異なることだ。

グラフに示すように、VIXは平均の20%前後に回帰する形で変動してきた。これに対し、同ETFの基準価格は中長期に減価し続け、設定時の10年末に比べ、現在(22年8月末)の基準価格は1000分の1以下に縮小している。

VIX先物の期近物と期先物の価格に限月間格差があるのが、こうした減価の特徴的な要因だ。

現物株と異なり、先物には取引の満期がある。このため、連動指数では日々、組み入れている第1限月の先物を一定数売り、第2限月の先物を買う限月切り替えのルールを定めている。

先物の期先高不利、期先安有利

問題は、組み入れた先物の限月切り替え時において、期先高(順ざや、コンタンゴ)の場合は乗り換えコストが発生するのでETFの基準価格のマイナス要因になり、反対に、期先安(逆ざや、バックワーデーション)の場合は乗り換えプレミアムが発生しプラス要因になる仕組みを内蔵している点だ。

「先物の期先高が不利で、期先安が有利」というのは、その反対ではないかと勘違いしやすいが、単純化すると、期先高での乗り換えは期近を安く売って期先を高く買うことになるので不利になり、期先安での乗り換えは、期近を高く売って期先が安く買えるので有利になる。

とりわけ、株式相場の動きが単調でVIXの低位が続くと、VIX先物は期先高となる傾向があるようだ。このため、VIXが短期に大きく変動したとしても、波乱が収まり株式相場の変動が比較的穏やかな状態が長く続くと、ETFは期先高の先物への乗り換えを繰り返すことになる。

その結果、VIXの平均回帰特性も相まって、同ETFは「中長期な減価」という経過をたどることになった。先物を組み入れたETFの留意点が浮き彫りになった一例といえる。

(QUICK資産運用研究所 高瀬浩)

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

セレクション

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン