/

5・6月も米利上げあるか、いきなり日銀次期総裁に試練も

「米連邦準備理事会(FRB)と市場のドル金利予測の違い」が注目されてきたが、1月の米消費者物価指数(CPI)発表により、ついに市場がFRBにすり寄ってきた。市場とFRBが予測するターミナルレート(利上げの到達点)が5%超のほぼ同水準に並んだのだ。年内利下げ転換説も風前の灯(ともしび)。マーケットは敗北を認め、市場の合言葉も「FRBを疑え」が「FRBには逆らうな」に変わった。

本欄で言及してきた3、5、6月「ダメ押し利上げ」(insuranceと表現される)の可能性も高まっている。

あと3回の利上げが現実になれば、4月に旗揚げする予定の「植田日銀」に円安再燃が最初の試練となる可能性が浮上してきた。

ニューヨーク(NY)市場の国際通貨投機筋と話していると、手ぐすね引いて待ち受けている印象を受ける。今後のFRBダメ押し利上げの実行状況を見極めつつ新日銀のお手並み拝見、という本音が透ける。円高の本番は年末近くになり、その前に円売りで一仕事という感覚が伝わってくる。

なお、14日日本時間午後10時半に発表された1月の米CPIだが、解釈・消化に手間取った。CPIは遅行指標であり「バックミラーを見て論じる」リスクが意識されたからだ。結局、本格的に反応し始めたのは、日本時間で15日になってのことであった。

引き締め過ぎるリスクより引き締め不足のリスクを重く見る、と明言するパウエルFRB議長や地区連銀総裁の姿勢が効いた。CPIについても、FRBは最も頑固なサービス業価格を重視する「スーパー・コア」を現状は4%前後と見込み、まだインフレ退治への道は遠いとの認識を明らかにしている。

この強行姿勢に屈した市場では、政策金利に連動する傾向が強い2年債が4.4%台から4.6%台まで急騰。10年債との長短逆転金利差(スプレッド)も今回の逆イールド現象の最大値水準である80bp(ベーシスポイント、1ベーシスは100分の1%)を本格的に超えた。リセッション覚悟で、ぶり返しやすいインフレを根絶やしにするFRBの意図を映す。

米国株式市場でもてはやされた米経済軟着陸説も影を潜めた。株価強気派の代表格、ウォートン・ビジネススクールのシーゲル教授も早速テレビ生出演に引っ張り出され、渋々、期待された利下げが来年にずれこむと強気の見解を修正した。

円相場も、一時は1ドル=133円台を超え円安・ドル高が進んだ。

1月の米雇用統計サプライズを機に、明らかに市場の潮目に変化が見られる。本日15日発表の1月の米小売売上高にも要注意である。

豊島逸夫(としま・いつお)
豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
YouTube豊島逸夫チャンネル
・業務窓口はitsuotoshima@nifty.com

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

関連トピック

トピックをフォローすると、新着情報のチェックやまとめ読みがしやすくなります。

関連企業・業界

企業:

セレクション

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン

権限不足のため、フォローできません