日本株見直しの兆し、信じてよいか 外国人投資家の本音
ニューヨーク(NY)市場のヘッジファンドなどのグループから、日本株について話したいのでNYまで来てくれないか、との依頼が来た。
筆者がスイス銀行に勤務している頃に知り合った後輩たち、あるいは同僚の息子などが、今や政府系ファンド、年金基金からヘッジファンドなどにリクルートされ散っている。トレーダーたちなので、対カンパニーへのロイヤルティーより、横のつながりのほうが強い。本音で語り合えるので、筆者にとっても得難い情報ソースになっている。それゆえ、コロナ禍前には年数回NYに出向き、情報交換していた。
コロナ禍でNYに出向けなくなった間は、もっぱら「Zoom(ズーム)」などで連絡を取り合っていた。いつでも気楽に話せるので、意外にもコロナ禍のほうがNYからの生の情報量は増えた。とはいえ、マンハッタン3番街の行きつけレストランで対面で話すほうが、細かなニュアンスも伝わるものだ。しかも、彼らが日本株についての情報を求めているときは、その後、決まって東京市場で「外国人買い」が顕在化したものだ。それゆえ筆者は、そろそろ2023年の本格的な外国人買いが来る兆しと受け止めている。
既に事前に重いデータ量の日本株リポートの数々がネットで送られてきた。セルサイド(販売業者側)が書いたものなので、それを読んだうえで率直な意見を聞きたい、というわけだ。筆者は全く利害関係がない独立系で本音で議論できるうえに、英語には困らないので気楽に声がかかるのだ。筆者の立場では彼らの本音が聞けるので、貴重な情報源ともなる。いわゆるギブ・アンド・テイクの関係である。
とりあえず、電話で話した限りでは米国株中心のポートフォリオを「国際化」することが今年のテーマで、そのなかに日本株も含まれるというわけだ。他にも欧州株、新興国株、中国株があるが、「アジア先進国株=日本株」というカテゴリーは注目されず、「エキゾチックな株」と見られてきた。しかし今年は、日本株が他国の株式より「マシ」ではないか、との発想で目をつけているようだ。もちろん、植田日銀と政府の共同声明(アコード)などへの興味は日本人と共有するところだ。
彼らの本気度が感じられるのは往復ファーストクラスで、ジョン・F・ケネディ空港(JFK)には、ストレッチリムジンのお迎えが待っていること。さすがにストレッチリムジンには当初筆者も引いてしまったが、今では慣れてしまった。
ちなみに、昨年の彼らの円安攻撃も、当初から並々ならぬ本気度がビンビン伝わってきたので、本欄でいち早く書き始めた。その後の途中経過も結局、第4波の円売り攻撃まで先行して書き続けた。NY市場のオフウォール街から、見知らぬカウンターパーティー(取引相手)が高速度取引(HFT)を駆使してNY時間に円を売りまくる光景は、ドル円市場の構造変化を想起させた。その円売り「変異種」も、今年は全くといっていいほど動きが感じられない。23年はレンジ相場と決め込んでいるようだ。
なお、今年はNY金が史上最高値更新もありうる状況なので、金のレクチャーも依頼された。今やNY市場で、金を詳細に語れる人物は絶滅危惧種だ。「そういえば、Jeff(筆者のニックネーム)はたしか、金にも詳しかったな」と言われ、特にストレスもないので引き受けた。
ギブ・アンド・テイクで筆者が論じたいことも山ほどある。ターミナルレートについて、市場予測と米連邦公開市場委員会(FOMC)予測に100bp(ベーシスポイント、1ベーシスは100分の1%)以上もの差があるが、本当のところどうなのか。年内利下げの可能性については、旧知のFEDウオッチャーたちの見解をジックリ聞いてみたい。
米地銀シリコンバレーバンク(SVB)破綻の戦犯として米連邦準備理事会(FRB)が批判されているが、量的緩和(QE)・ゼロ金利から量的引き締め(QT)・高金利への急速な転換が生むリスクを、FRBはどの程度認識していたのか。様々な見解に耳を傾ける機会なので、頭の中を整理する意味でも滞在の延長もいとわずの姿勢である。
本欄もYouTube(ユーチューブ)もNY滞在中に随時更新の予定だ。

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