SVB、預金の8割が流出 健全性テストも免除の衝撃
28日に米議会上院の銀行委員会で、米連邦準備理事会(FRB)のバー副議長(金融監督担当)は、米地銀シリコンバレーバンク(SVB)の生々しい破綻劇の実態を明かした。
バー氏は、2021年11月の時点で、高金利が銀行に与えるリスクについて警報を発していた。しかし、SVBは対応を怠った。
3月8日に、SVBは増資を発表して、預金者の懸念を抑え、その時点では事態収拾が見込まれた。
しかし、3月9日には、保護されない預金が危ないとの情報が拡散され、既に報道されているとおり420億ドルの預金が引き出された。
同日、FRBはスタッフ総動員で、SVBがFRBのディスカウント・ウインドー(割引貸し出しの窓口)から大量の緊急融資を受けるための担保を探した。その結果、FRB当局も、資金不足が解消されると判断した。
ところが、翌3月10日の朝、バー氏は、SVBからの預金引き出しが予想をはるかに上回りそうだ、との報告を受けた。その額たるや1000億ドルに達していた。
かくしてSVBは閉鎖に至った。
結局、9〜10日の2日間で、預金流出額は1420億ドルに達したが、これは、SVBの預金総額1750億ドルの81%に相当する。
オンラインバンキングとSNSによる情報拡散が、現代版の取り付け騒動を、想定をはるかに超える規模とスピードで生じさせることを、市場は改めて思い知らされ、衝撃を受けている。
本件では、FRBの金融機関へのストレステスト(健全性審査)が甘かったとの批判も続出している。
リーマン・ショックの反省からドッド・フランク法(金融規制改革法)が生まれ、資本規模が2500億ドル以上の大手銀行は1年に一度、1000億ドルから2500億ドルの資本規模であれば、2年に一度(偶数年)、ストレステストの実施が義務づけられた。SVBは2021年末時点で資本規模が1000億ドルに満たなかったため、22年のストレステストの対象にはならなかった。
さらに、ストレステストそのものにも重大な欠陥があった。FRBが重視する負荷項目は「国内総生産(GDP)成長率の低下」「商業用不動産への融資返済不履行」「失業率の上昇」だったのだ。いずれも、マクロ的に悪化せず問題はない項目ばかりで、ストレス(負荷)にはならなかった。
対して、実際に大きく悪化した「インフレ率」と「高金利」は重点項目に含まれていなかったようだ。特に、消費者物価指数(CPI)の伸び率については2025年まで2%以下という負荷条件が想定されていた。ここが決定的「欠陥」とされ、審査が「甘い」と批判されているのだ。
SVB破綻についての調査は、まだ始まったばかりだ。
今後、新たな問題点が噴出する可能性もある。

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