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介入3兆円ならピーナツ、投機筋に勝算

22日の為替介入規模が3兆円と試算されていることは、ニューヨーク(NY)のヘッジファンドにも早速、ニュースとして伝わった。日本側では過去最大とのことだが、NY市場は「ピーナツ」(とるに足らない額)との反応だ。

今や米連邦準備理事会(FRB)の資産は8.8兆ドル(約1270兆円)規模にまで膨張している。2011年の為替介入のときの同資産規模は2兆ドル台後半であった。結局、日本側金融当局は鉄砲で高速度取引の機関銃と戦っているようなものだ。いまだにブローカーが外国為替市場で一定の役割を果たす東京市場との構造格差が鮮明だ。

これでは、止血剤程度の効果しか期待できまい。

日銀の威光も東京市場どまり。NY市場に日銀の威光は及ばない。そもそも今回の円安はNY主導で展開した。大台突破も日銀が制御できない欧米市場で起こった。ヘッジファンドの反応を見ていると、日本側の常識的円相場予測が甘く見えてくる。

ただし米国側でも、超ドル高のデメリットも意識され始めた。大型国際企業の業績への影響もその一例だ。

さすがに1ドル=160円台視野となると、米財務省も看過できまい。

長期的には円安も最終段階。短期的には円安真っただ中。政策金利との連動性が強い米2年債は4.3%、将来の景況感を映す10年債は3.9%といよいよ4%の大台をうかがう。逆イールドも0.4%近傍まで拡大してしまった。10年債が上がると、将来の利上げ不況感が強まり、さらに政策金利予測上昇で2年債も上がるという悪循環が繰り返されている。今や、8%の消費者物価指数(CPI)上昇率を2%台で安定的に推移するまで下げるには6%以上の利上げが必要との議論に現実味が増している。サマーズ元米財務長官は、その先鋒(せんぽう)に立つ。

最新のドット・チャート(政策金利見通し)ではターミナルレートが4.6%でも、同チャートの21年12月版には22年のターミナルレートを1%未満と予測していた。リバース・インジケーター(反面教師)という有り難くない二つ名をつけられたドット・チャートについて、FRBのパウエル議長も廃止を考慮したこともあると語っている。ドット・チャートは額面取りに受け取るな(a grain of salt)、との発言はいまだに語り草になっている。フォワードガイダンス(政策の先行き指針)がその枠割を果たせず、これもパウエル氏が停止の可能性を明言している。

灯台も視界に入らず、未知の海域を海図なしで航海を強いられる「パウエルFRB」。

年内から23年にかけては円相場の水準がかなり荒々しい乱高下を経て切り下がってゆく傾向を覚悟せねばなるまい。

豊島逸夫(としま・いつお)
豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
・YouTube豊島逸夫チャンネル
・業務窓口はitsuotoshima@nifty.com

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