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習近平氏、サウジ訪問 ペトロ人民元構想の現実味

人民元の国際化は習近平(シー・ジンピン)政権の長期的悲願といえる。国際通貨基金(IMF)のSDR(特別引き出し権)構成通貨として、米ドル・ユーロ・円・ポンドに続き、第5の国際通貨として人民元が承認されたことは、歴史的第一歩であった。

その後、徐々に、しかし確実に、人民元の国際通貨としての地位は上がってきている。国際決済銀行(BIS)が3年に1度発表する世界の為替取引に関する調査結果の最新版(10月27日公表)によれば、世界の外為市場で売買される通貨ペアのなかで、人民元のシェアが、前回(2019年)の4.3%から、7%に急上昇した。32.3%から30.5%に微減したユーロとの対比が鮮明だ。

このような追い風に乗って、サウジ産原油の最大輸入国である中国が、原油売買決済通貨として人民元の選択肢をアピールする絶好のチャンスが回ってきた。

そもそも、サウジは中国にとり原油の最大供給元であり、中国はサウジにとり最大の貿易相手国だ。

「ペトロ人民元構想」の布石として、すでに2020年には英石油大手BPが上海先物取引所で人民元建てにより中東産原油を引き渡すなどの単発的事例は出ている。

さらにロシア産原油の取引価格の上限を1バレル60ドルとする措置に、対ロシア経済制裁に反対してきた中国が反発を強めるであろう。自国の金融機関を通じた輸送保険を用いて、上限価格にとらわれないロシア産原油輸入を模索するシナリオもある。その際に、人民元建てで決済される可能性がある。

「ペトロ人民元構想」をちらつかせることは、米ドル一極集中の通貨覇権に、中国・サウジが共同作戦で、風穴を開けるチャンスともみられる。ロシアも近年はロシア中央銀行の人民元保有を増やしてきたと伝えられている。さすがにルーブルを国際通貨として認知させることは無理筋ゆえ、次善の策として、人民元を支持する戦略が透ける。ウクライナ戦争による対ロ経済制裁も、ロシアの人民元依存度を確実に高めた。

ただし、サウジの通貨・リヤルは米ドルにペッグ(連動)している。ここは、人民元を含む複数通貨バスケットにペッグすることが必要となろう。

今回の習近平氏のサウジ訪問で、ペトロ人民元構想が大きく進展するとは考えにくい。しかし、中国の長期通貨戦略の視点では、これまでより明確に、継続協議の一つとして、位置付けることが、重要な一歩となろう。

豊島逸夫(としま・いつお)
豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
YouTube豊島逸夫チャンネル
・業務窓口はitsuotoshima@nifty.com

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