ばしこさん、フルタイム共働き子育て世帯の資産運用
投信ブロガー
ブログ「はる記―40代でFIREを目指す―」を運営している「ばしこ」さんは、外資系金融機関で働く30代後半の社内システムエンジニア(SE)。フルタイムで働く妻と子供2人の家族4人、都内の自宅マンション(住宅ローン返済中)で暮らしている。
ブログ名の「はる記」はHappy As Usual(幸福な日常生活)にFIRE(Financial Independence,Retire Early、経済的自立と早期リタイア)のRを付け加え、幸せな日常を送りながら早期リタイアを目指す記録を意味する。特に夫婦が「フルタイム」の共働きをしながら子育てもしている世帯としての情報発信に特徴を持たせているそうだ。ばしこさん一家の資産運用を聞いた。
高校1年生で株式投資
――投資を始めたきっかけを教えてください。
「中学生の時に、10万円を5年間で1億円にするという投資本を読んで、高校から大学までの間に投資で億単位の資産をつくって、そのまま働かずに生きるという野望を抱きました」
「活字を読むのが好きで、近くに住んでいた祖父の家で幼い頃から日本経済新聞に目を通すなど、株式のことを知る機会があったので、投資に対する恐怖感はありませんでした。2000年、高校1年生の時に、お小遣いやお年玉でためた10万円を元手に日本株をミニ株で購入したのが最初です」
「大学生になってからもアルバイト代を投資に回しました。ただ、大学卒業時の総資産は340万円強。投資で生活する夢は破れ、普通に就職しました」
――ブログはいつから始めましたか。
「1999年にパソコンを購入してホームページを公開。2006年にブログ形式に変更し、17年からは投資の記録や読んだ本の感想を書き込むようになり今に至っています」
全世界株インデックス投資と個別株投資
――資産配分を教えてください。
「リスク資産の投資商品は、個別株、指数連動型のインデックスファンド、上場投資信託(ETF)の3種類で、資産配分は、ジェレミー・シーゲル著の『株式投資の未来』で紹介されていたポートフォリオを自分なりにアレンジしています。具体的には、資産の約4割が全世界株に連動する時価総額加重平均型のインデックスファンドやETFへの投資です(22年12月末時点)」
「残りが、『優良グローバル企業』『高配当』などの投資テーマに基づく米国株を中心とした個別株への分散投資です」
「現金は、相場暴落時の追加投資用に運用資産全体の9.5%程度です。それとは別に生活費などに充てる分として100万円程度確保しています。そのほか、投資用の不動産(首都圏の区分所有マンション1戸)も保有しています」
家族4人で非課税制度をフル活用
――どのようなインデックスファンドに投資していますか。
「私自身は、企業型確定拠出年金(DC)と少額投資非課税制度(NISA)を利用して、全世界株や海外先進国株に投資するインデックスファンド2本を毎月積み立てています。会社のDCは制度上、マッチング拠出ができないため、22年12月から個人型確定拠出年金(iDeCo)も開始しました(図表A)」

「一般NISAを選んだのは、ロールオーバー(移管)を繰り返しながら、同じ金額を投資し続けると、積み立て型のつみたてNISAよりも有利になると自己分析したためです」
「以前はコストを最重視して、全世界株に投資するETFを積み立てていましたが、為替取引や配当金再投資などの手間が掛からない低コストのインデックスファンドに切り替えました」
「もともと投資に否定的だった妻も、これまでの運用成績を伝えたところ、iDeCoとつみたてNISAを始めました」
「わが家では、現時点で使える非課税制度をすべて利用し、世帯全体で毎月26万円ほどを積み立て、ポイントが付くクレジットカードや電子マネー決済を重宝しています」
「一般NISAやジュニアNISAの非課税枠は毎月の積み立て投資だけでは使い切れないので年初に一括投資もしています。24年からは新たなNISAが始まり、非課税枠が広がると同時に、非課税保有期間が無期限化されてロールオーバーも不要なので、最大限に有効利用するつもりです」
世帯のリスク資産は6500万円に
――投資で失敗した経験はありますか。
「社会人になってすぐ、高利回りをうたった匿名組合形式のファンドに手を出したところ、元本が返ってこない事件に巻き込まれ、投資金額(50万円)の8割以上を失ってしまいました。リーマン・ショックの暴落時には米国株をナンピン買いしました。買っては下がるのを何度も繰り返して、結局トントンになったところで手放してしまいました」
「それ以来、株式の長期投資を意識するようになりました。全世界株のインデックスファンドの積み立て投資に軸足を移したのは17年からです。子どもが生まれ、ジュニアNISAを使って学費を準備しようと考えたのがきっかけです」
「40代でのFIREを目指してはいますが、子どもたちの進学先の選択肢を狭めたくないので、必要な学費次第では、50歳以降も働き続けます」
――資産運用をしてよかったですか。
「高校生の時の10万円投資から始まっていろいろな失敗を体験しましたが、くじけずに資産運用を続けたことで、不動産投資を除く世帯全体のリスク資産額を約6500万円まで積み上げることができました」
「仕事をやめても数年は暮らしていける資産があることで、心理的な安定を得ることができましたし、経済的な観点から物事を見られるようになりました。金銭的に報われたと実感しています」
100円から投資ができる時代
――これから投資を始める人たちにアドバイスを。
「リスク資産と安全資産の配分比率は人それぞれのリスク許容度に応じて決める必要があります。そのうえで、リスク資産としては、低コストの全世界株に投資するインデックスファンドを選択するのが無難だと思います」
「『ウォール街のランダム・ウォーカー』などの名著を読んで、インデックス投資の効用について腹落ち(納得)することが肝心ですが、実際に投資を経験しないと分からないことも多くあります。今は100円から投資ができる時代です。まずは、失っても惜しくないくらいの金額から始めてみてはどうでしょうか」
(QUICK資産運用研究所 聞き手は笹倉友香子、高瀬浩)