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実際の運用年数より長い「平均保有期間」とは

投信観測所

「平均保有期間」という指標があり、個々人が投資信託を購入してから解約するまでの保有期間を集約した計算値になる。一般には「解約率」の逆数を平均保有期間とする例をよく見かける。ところが、この平均保有期間を個々の投信に適用すると、平均保有期間が運用期間より長くなるケースが続出し、実態からかけ離れていることが分かる。

これは、投信を保有した期間と解約率が直接には関係していないことを意味しており、米国の投資信託協会(ICI)は2001年の時点で「解約率の逆数を保有期間として使うべきではない」という見解を示している。

「平均保有期間>運用年数」が1100本以上

解約率は投信の解約額が運用資産額に対しどの程度の割合かを示す指標で通常、投信の直近1年間の解約額の合計を1年前からの純資産残高平均で割って求める。

解約率が小さいほど、頻繁な売買の対象にはならず、投信が長く保有されていることにつながるので、簡便的に解約率の逆数を用いて平均保有期間を計算するのが一般化してきた。

ところが、解約率の逆数として計算した平均保有期間は実態にそぐわないのが実情だ。解約までの保有期間の起点にあたる購入がいつ発生したか考慮されていないうえ、純資産残高は購入と解約以外の要因である運用パフォーマンスでも増減するためだ。

米国の投信協会は2001年の時点で「解約率は保有期間を反映しない。解約率の逆数を保有期間として使うべきではない」という見解を示している。

実際、個別投信の平均保有期間を計算してみると、平均保有期間が運用期間よりも長い投信が続出する。22年3月末時点では、本数にして1100本以上もある。

このうち、平均保有期間が運用期間よりも長い大型ファンド15本を表(A)にピックアップした。

残高が3番目に大きいESG(環境・社会・企業統治)関連ファンドの「グローバルESGハイクオリティ成長株式ファンド(為替ヘッジなし)<愛称:未来の世界(ESG)>」を見ると、20年7月に設定されたばかりなので、22年3月末までの運用年数は1.7年。これに対し、平均保有期間は8年となり運用年数の4倍以上だ。

表の中で運用年数が最長の15.1年で残高15番目の「セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド」の平均保有期間も、運用年数を超す16.6年という具合だ。

表にはないが平均保有期間が6655年という異常値を示すファンドもある。日本株で運用し2008年に設定された「シンプレクス・ジャパン・バリューアップ・ファンド」の純資産残高は200億円(1年平均)。これに対し、解約額は1年で合計300万円とほんのわずかにすぎない。

「解約率」自体は有効

投信市場全体の平均保有期間についても、個々の投信において運用年数とかけ離れている以上、一般的な平均保有期間は現状を示していないことになる。

グラフ(B)はETF(上場投信)を除く株式投信全体の平均保有期間について、3月末まで半期末ごとに集計したものだ。3月末時点で3.8年となり延びてきたように見える。ところが目を凝らすと、平均保有期間の不自然な増減が随所にみられる。3月末時点では半年(0.5年)前からの延びが0.7年と、比較期間である半年を超すなどだ。

もっとも、「解約率」自体は解約額が運用資産額に対しどの程度の割合かを示す指標として有効であり、グラフ(B)下段に示すように、解約率は減少傾向にある。

(QUICK資産運用研究所 高瀬浩)

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