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ペロシ氏とパウエル氏の真意を測りかねる市場

ペロシ米下院議長の台湾訪問が引き起こす市場の不安感は、台湾着陸までの時間帯で最も強まり、いざ着陸となると資産価格の変動は限定的となった。市場が危惧した危機的反応は見られず。

ヘッジファンドのなかには、有事の米国債買いポジションを売り手じまう動きさえ見られた。いわゆる「噂で買って、ニュースで売る」典型的パターンだ。米国債利回りも下落後、反騰して1日の取引を終えた。

なお、10年債と3カ月の財務省証券利回りが逆イールドのニアミス状態になる局面も見られた。10年債と2年債の利回り格差が通常は注目されるが、プロ目線では3カ月財務省証券との利回り格差をより強く不安視する傾向が強い。

ドル相場もドル安後、ドル高に振れた。方向感を読み切れない。株式市場もパニック的な売りは見られない。有事の金買いも若干見られたが、ニューヨーク(NY)市場の大引けにかけて、早くも売り手じまわれた。動いているのはもっぱら小物のファンドだ。

基本的な市場の見解として、米中とも共倒れは回避せねばならぬ、との読みが目立つ。両国とも国内向けに強硬発言を繰り返す状況が続くとの解釈である。偶発的衝突リスクは解消されないので、テールリスクは意識している。

NY市場では、ペロシ・リスクより、パウエル・リスクのほうが論じられる傾向も顕著であった。

デイリー・サンフランシスコ連銀総裁が「今年は利上げ、来年は利下げ」との市場予測について聞かれ、「とんでもない。いまだとても緩和の可能性を語れる状況ではない。まずは、インフレ退治に傾注せねばならぬ。インフレ鎮静化のめどが立たねば、次の一手は考えられない」と穏健派としては異例の強い口調で語ったのだ。

パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長が、米連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見でフォワードガイダンス(金融政策の方向明示)の棚上げに言及したので、市場はFOMC参加者の発言になんらかのヒントを求めざるを得ない。ちなみに市場ではFRBが四半期ごとに発表する経済予測の中のドットチャート(参加者の金利予測)を廃止する可能性も語られる。

市場に流れていた「来年は利下げ」の楽観論がかくして強く抑え込まれると、市場ではますます視界不良感が強まる。

ペロシ・リスクは米中戦争のテールリスクをはらむが、パウエル・リスクは、真綿で首を絞めるごとき影響で市場にジワリ効いている。

豊島逸夫(としま・いつお)
豊島&アソシエイツ代表。一橋大学経済学部卒(国際経済専攻)。三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)入行後、スイス銀行にて国際金融業務に配属され外国為替貴金属ディーラー。チューリヒ、NYでの豊富な相場体験とヘッジファンド・欧米年金などの幅広いネットワークをもとに、独立系の立場から自由に分かりやすく経済市場動向を説く。株式・債券・外為・商品を総合的にカバー。日経マネー「豊島逸夫の世界経済の深層真理」を連載。
・ブルームバーグ情報提供社コードGLD(Toshima&Associates)
・ツイッター@jefftoshima
・業務窓口はitsuotoshima@nifty.com
  • 出版 : 日経BP
  • 価格 : 1,045円(税込み)

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