「反撃」念頭、長射程弾配備を前倒し 防衛省の概算要求
27年度に新イージス艦

防衛省は31日に決めた2023年度予算の概算要求で抑止力強化と有事への備えに力点を置いた。相手の射程圏外から攻撃する「スタンド・オフ・ミサイル」の配備を急ぐ。ミサイル防衛を担う「イージス・システム搭載艦」も27年度の就役を目指し、整備費を初めて求めた。
「防衛力の抜本的な強化」に関わる分を金額を示さない「事項要求」にした。年末の予算編成までに精査する。
国産巡航ミサイル「12式地対艦誘導弾(SSM)」能力向上型の運用開始を3年前倒しして26年度からにする経費を盛り込んだ。射程を1000キロメートル超に伸ばし、計算上、北朝鮮や中国沿岸部に届くようになる。

相手のミサイル発射拠点などをたたく「反撃能力」を行使する手段となりえる。
島しょ防衛用の高速滑空弾の量産に向けた費用も要請した。音速の5倍以上で飛ぶ極超音速誘導弾の研究費も計上した。
イージス・システム搭載艦2隻についてエンジン取得などを事項要求した。導入を断念した地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の代替となる。基準排水量2万トンほどを想定し、海上自衛隊の艦艇で最大規模となる。
中国やロシアが開発する極超音速滑空兵器へ対処する機能を後から載せられるようにする。通常より高い高度で撃つロフテッド軌道の迎撃にも有用とされるレーダー「SPY7」や迎撃ミサイル「SM6」を採用する。
弾薬や装備部品の備蓄も増やす。中長期の戦闘に対処できるよう継戦能力を整える。中国が台湾への軍事的圧力を強め、ロシアによるウクライナ侵攻は半年以上続く。
島しょ部などに機動的に部隊展開するため輸送機C2や多用途ヘリコプターUH2などを追加取得する予算も含めた。攻撃に使える無人機の活用も進める。