英、アジアの経済成長に期待 TPP加盟で長期関与の姿勢

【ロンドン=江渕智弘】欧州連合(EU)を離脱した英国にとって環太平洋経済連携協定(TPP)加盟は経済外交の要となる。アジアに長期的に関与する姿勢を示し、成長力の取り込みに期待する。
英議会図書館の資料によると、TPP加盟による英国の国内総生産(GDP)の押し上げ効果はわずか0.08%。英国のモノ・サービスの貿易に占めるTPP加盟国の比率が7%にとどまるうえ、日本やオーストラリアなど9カ国とはすでに2国間の自由貿易協定(FTA)を結んでいる。TPPの直接の経済効果は大きいとはいえない。
期待するのは長い目でみた恩恵だ。世界の経済成長の大部分はアジアなどの新興国が担う。スナク首相は31日、「TPP加盟で英国は成長する太平洋の経済グループの中心に置かれる」と指摘し、長期にわたり英企業がアジアの成長を享受できると訴えた。将来、TPPの加盟国が増えれば、さらに経済的な利益が拡大するとの思惑もある。
安全保障でもインド太平洋シフトを強める。日本、イタリアと戦闘機の共同開発で合意した。日本とは互いの部隊を訪問しやすくする「円滑化協定」を結んだ。こうした安全保障への貢献は、アジアの国々の信頼を得て経済関係を強めやすくするためでもある。
国際通貨基金(IMF)の1月の見通しによると英国は主要7カ国(G7)で唯一、23年にGDPが縮む。英政府がTPP加盟を急いだのは、労働力不足や企業の流出といったEU離脱の負の側面に目が向きやすいなかで離脱のプラス面を強調する意味合いもある。