路線価下落、訪日客需要が蒸発 都心は緩和マネー流入 - 日本経済新聞
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路線価下落、訪日客需要が蒸発 都心は緩和マネー流入

新型コロナウイルス禍による訪日客の急減や消費の低迷が地価を押し下げている。国税庁が1日発表した2021年1月1日時点の路線価は、全国の8割にあたる都府県で平均値が下がった。観光地や繁華街の下落が目立った。主要都市の駅前などは堅調だったほか都心には海外からの緩和マネーが流入し、二極化の様相も呈している。

全国平均は前年比0.5%の下落と、6年ぶりに下がった。東京、大阪、名古屋の三大都市を含む39都府県でマイナスとなった。一方、北海道、宮城、千葉、福岡、佐賀、熊本、沖縄の7道県は上昇し、山形県は横ばいだった。

新型コロナの影響が顕著に表れたのが観光地だ。都道府県庁所在地ごとの最高路線価地点をみると、前年からの下落率が最も大きかったのは、周辺に世界遺産を抱える奈良・大宮通りで12.5%だった。

神戸・三宮センター街(9.7%)や大阪・御堂筋(8.5%)なども大きく下げた。前年に40.8%上昇した那覇・国際通りは1.4%のマイナスに転落した。

訪日客がたくさん訪れれば、宿泊や買い物によって消費額が増え、ひいては地価の上昇につながる。だがコロナによって海外との移動が制限され、20年の訪日客数は前年比87%減の411万人まで落ち込んだ。訪日客消費額は観光庁の試算ベースで7446億円で19年の6分の1に縮んだ。

コロナ下でも堅調だったのは、オフィス街や駅前一等地だ。上昇率が大きかった地点は仙台・青葉通りの3.8%を筆頭に、千葉・駅前大通り(3.5%)、宇都宮・東口駅前ロータリー(3.4%)などが続いた。

仙台駅周辺は徒歩圏を中心に住宅需要が底堅い。宇都宮市では次世代型路面電車(LRT)の開業を23年に控える。駅前再開発が進む地域はマンションや商業施設の建設投資を呼び込み、将来の地価の上昇が期待される。

都市未来総合研究所の平山重雄氏は「住宅地やオフィス街はコロナの影響を受けにくく、観光地などに比べて地価も安定している」と分析する。

不動産投資市場からは違った側面も見える。不動産サービス大手のジョーンズラングラサール(JLL)によると、20年の海外投資家による国内不動産への直接投資額は1兆5547億円で19年比で6割近く増えた。21年の東京都の路線価は前年の5%上昇から1.1%下落に転じたが、世界的な緩和マネーが都心の地価を下支えする構図もある。

国内の大手企業が業績悪化で保有不動産を売却する動きが相次ぐなかで買い手となっているのも海外勢だ。近鉄グループホールディングスは3月、大阪や京都などにある8つのホテルを米大手投資ファンドのブラックストーン・グループに売却すると発表。世界的な低金利下で、少しでも高い利回りを狙う海外投資家が触手を伸ばしている。

JLLの大東雄人氏は「オフィスビルや商業施設が集積する東京は世界的にみても魅力的な投資対象が多い」と解説する。世界的にワクチン接種も進んでおり、コロナが収束して訪日客が戻り始めれば、地価も回復傾向に向かうと予測する。

▼路線価 主要道路に面した土地の1平方㍍あたりの標準価格。相続税や贈与税の算定基準となる。全国の住宅地、商業地、田畑など建物の敷地となる土地が対象で21年分の調査地点は約32万カ所。国土交通省が公表する公示地価(約2万6000カ所)より土地相場を詳細に把握できる。公示地価の8割程度の価格が目安となる。

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