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日米経済版2プラス2 共同声明と行動計画の全文

日米両政府が29日、米首都ワシントンで開いた外務・経済閣僚協議「経済版2プラス2」の共同声明と行動計画の全文は次の通り。

共同声明

2022年7月29日、ブリンケン米国務長官とレモンド米商務長官は、林芳正外相と萩生田光一経済産業相を迎え、第1回日米経済政策協議委員会(経済版2プラス2)閣僚会合を共催した。

ルールに基づく国際経済秩序の利益を強調する前向きな経済ビジョンを提示するという共通の決意を確認するとともに、我々の経済をより競争力と強靱(きょうじん)性あるものにする必要性を強調した。

全ての人々へのリスクと不確実性のレベルを高めてきた複雑な世界規模の経済状況について考慮した。

COVID-19のパンデミックからの回復はいまだ不完全であるとともに、パンデミックがサプライチェーン(供給網)の混乱、物価高騰、格差拡大などにより様々な経済的課題の起因となり、歴史的に十分な恩恵を受けてこなかったコミュニティーにより影響を及ぼしてきたことを指摘した。

ロシアによるウクライナへの残酷でいわれのない不当な侵略を強く非難するとともに、この侵略がこうした問題を悪化させ、世界中のエネルギーと食料の安全保障を損なったとする認識を共有した。

エネルギー不安による困難に直面する中で、気候危機に対処する必要性を確認した。

パンデミックがデジタルトランスフォーメーション(DX)を含む様々な技術の普及を加速化させることにより、社会経済生活を大幅に変容させ、新たな機会と課題を提示しているとの認識を示した。

人工知能、量子技術、再生可能で循環型の技術といった重要・新興技術などにおける技術革新は変革をもたらす可能性とともに、悪用された場合、我々の経済にリスクをもたらすことを指摘した。

パンデミックからの完全かつ持続可能な回復を実現するための措置を引き続き講じるとともに、新たな機会を最大限活用し、前例のない課題に備えるためパンデミック後の世界における国際秩序を強化することにコミット(関与)した。

日米両国がインド太平洋およびそれを越えた地域において繁栄をもたらし、民主主義的価値を堅持し、経済格差を削減し、人権を保護するような開かれた持続可能かつ包摂的な経済成長を支持することを決意した。

労働者や小規模ビジネスに利益をもたらし、女性の経済参画を強化するような経済政策や外交政策などを通じて、中産階級のための裾野の広い経済的繁栄を促進していくことにコミットすることの重要性を改めて表明した。

日米経済政策協議委員会や主要7カ国(G7)、アジア太平洋経済協力会議(APEC)、インド太平洋経済枠組み(IPEF)などの他のプラットフォームを通じて、このビジョンを推進していく。

世界中の労働者、ビジネスおよび国々にレベル・プレイング・フィールド(公正な競争環境)を提供することの重要性を強調しつつ、自由で公正な貿易に基づく多国間貿易システムを支え、経済的威圧および非市場的政策・慣行に対抗する政策を進めることにコミットした。

世界の二大民主主義経済としての日米両国は民主主義が繁栄、安定および安全保障のための最良のモデルを提示するということを実証できるとの見解を共有した。

この文脈においてバイデン米大統領のボトムアップおよびミドルアウトから作り上げるという計画および岸田文雄首相の「新しい資本主義」を含むそれぞれの経済アジェンダについての見解を共有し、意見を交換し続けていくことにコミットした。

さらに不公正で反競争的な非市場的政策および慣行の弊害から、労働者、企業、投資家を守る方法について議論した。

また「日米競争力・強靱性(コア)パートナーシップ」の共通目的を促進するための両国の協力および志を同じくするパートナーとの協力を歓迎し、インド太平洋地域およびそれを越えた地域におけるルールに基づく経済秩序と繁栄を強化するための我々の共同のリーダーシップを強調した。

経済安全保障やルールに基づく国際経済秩序に対する脅威に対抗することにコミットするとともに、日本の経済安全保障推進法の成立を含む両国の直近の進展に留意した。

サプライチェーン(供給網)の透明性、セキュリティー、持続可能性を促進するために、重要なサプライチェーンの強靱化と多様化に焦点を当てた。

また技術の競争力および強靱性を支え、兵器開発に不可欠な技術の不法な転用によってもたらされる課題に対処するため、研究開発および輸出管理などを通じて、国際的なルールや規範と整合的な形で重要・新興技術を促進および保護していくに当たり連携していく。

主権国家や個人および産業の正当な利益を脅かすような方法による、経済的威圧および不公正で不透明な貸付慣行を含む経済的な影響力の有害な使用について、深刻な懸念と反対を表明した。

こうした行為が正当な主権に基づく選択を損ない、自由で開かれたルールに基づく国際秩序に挑戦するものであり、対処にあたっては共同の対応が最善の策であることを確認した。

長期的な経済成長および開発のための持続可能な金融の重要性を尊重しつつ、国際的に認められた原則、ルール、基準に従って全ての債務者および債権者が公正で透明な開発金融を促進するために、二国間および多国間で協力する必要性を強調した。これらの問題に取り組むにあたり、議論を深め、志を同じくするパートナーとの協力を促進する意向を表明した。

経済安全保障は全体の安全保障にとって不可欠であり、外交と経済政策は深く結びついており、一体的なアプローチが必要であるという信念を強調した。そのために日米経済政策協議委員会は二国間連携に不可欠なチャネルを提供でき、この枠組みを定期的に開催するとともに、米国による23年のAPEC開催と日本による23年のG7開催の間で、優先的な経済課題について協力していく意向を確認した。

日米経済政策協議委員会の下で特定された優先課題を前進させる重要性を認識し、それぞれの次官級に、両国の経済ビジョンに基づいた日米経済政策協議委員会行動計画を実施するとともに、現在の取組を共有するため民間セクターのしっかりした関与を確保し、22年末までに次回の日米経済政策協議委員会次官級協議を開催するよう指示した。

行動計画

ルールに基づく経済秩序を通じた平和と繁栄の実現

1.日米両国は「日米競争力・強靱性(コア)パートナーシップ」に基づく協力を拡大及び深化させることにより、競争力および強靱性を更に向上させることを約束する。両国はインド太平洋経済枠組み(IPEF)を含む革新的な経済的枠組みを通じて、インド太平洋地域における協力、安定、繁栄、発展や平和を更に強化することを追求する。

2.ロシアによるウクライナ侵略を強く非難することで一致している。両国はウクライナとの連帯を堅持しウクライナを支援し続ける。この観点から両国はルガーノ宣言を歓迎した。

3.ロシアによるウクライナ侵略がエネルギーおよび食料の市場に及ぼす影響を緩和するために協力することにコミットしている。

エネルギー移行と脱炭素化に向けたモメンタムを維持する必要性を強調するとともに、長期的なエネルギー安全保障および50年までの温暖化ガス排出ゼロの達成に向けて、再生可能エネルギー、原子力、アンモニア、クリーンな水素、二酸化炭素の回収・有効利用・貯留、カーボンリサイクルの役割を認識する。

またエネルギー部門への投資を強化し、現在の危機に対応するために、液化天然ガス(LNG)を含む、短期的なエネルギー資源の安定的な確保の必要性を認識している。日本はグローバルなエネルギー市場を安定させるため必要に応じて米国がシェールオイルおよびシェールガスの生産を増産していることを歓迎する。

さらにインド太平洋地域および地球規模におけるエネルギー安全保障およびメタン排出削減を支援する必要性を確認する。また革新原子炉のプロジェクトの進展を評価し、より強靱な原子力サプライチェーンを構築するために協力することを約束する。

4.世界貿易機関(WTO)条項に相いれない方法で食品の輸出禁止・制約を課さないことの重要性を改めて確認しつつ、農業サプライチェーンの開放性を支持することを約束するとともに、グローバルな食料安全保障を強化するために他のパートナーと協力することを追求する。

また食料生産の持続可能性および生産性を改善する政策を実施し、農業、食料システムおよび食料サプライチェーンの強靱性を高めるとともに、肥料などの農業投入財へのアクセスを促進することを全ての国に求める。この観点から、第12回WTO閣僚会議で採択された食料不安への緊急対応に関する閣僚宣言の重要性を強調した。

また生産国と消費国の間の対話およびグローバルな食料安全保障を強化するためのデータの使用を慫慂(しょうよう)している。

5.データガバナンスへの様々なアプローチを尊重しつつ、国境を越えたデータ流通の障壁に対応するための国際的な取組を強化することにコミットする。

さらに新たに設立されたグローバルな越境プライバシールール(CBPR)フォーラムの推進と拡大や経済協力開発機構(OECD)による民間セクターが保有する個人データへの信頼性のあるガバメントアクセスに関する取組といった多国間イニシアチブにおける日米協力の役割について再確認する。

その際に日米協力は志を同じくする民主主義体制の間で、信頼性のある自由なデータ流通を促進させるための共通の理解と基盤を前進させる。

6.政府横断的に協力して「日米サイバー対話」における脅威の評価とその緩和の取組についての議論などを通じてサイバーセキュリティーの脅威に関する情報共有を促進する。また、4閣僚は「インド太平洋地域向け日米EU産業制御システムサイバーセキュリティウィーク」において連携する意向を確認する。

7.民間企業が人権を擁護する環境を醸成するために、ビジネスと人権に関する協調にコミットし、進行中の二国間の協議を歓迎する。

経済的威圧と不公正で不透明な貸付慣行への対抗

8.経済的威圧に対処・対応し、非市場的政策・慣行に効果的に対抗するとともに、WTO、OECD、G7、G20などの多国間フォーラムを含む国際社会に調整されたメッセージを発信するために、志を同じくする他のパートナーと協調することを約束する。

9.債務の透明性と持続可能性、国際的に調整された債務処理、債務国の自律性を尊重する公正な貸付慣行、および社会に優しいインフラ投資の確保を助けるために「質の高いインフラ投資に関するG20原則」、「債務支払猶予イニシアチブを超えた債務処理のためのG20共通枠組み」を含む国際的ルール、基準および認められた原則を順守するよう全ての関係者に呼びかける。

さらに「OECD外国公務員贈賄防止条約」および「OECD多国籍企業行動指針」などの国際的な義務と基準を適切な限り順守するよう全ての主要経済国に呼びかける。

10.また、公正で透明性のある開発金融を促進するために協力する。我々は「共通枠組み」の下での債務処理およびスリランカのような他の脆弱国のための債務処理における債権者間の公正な負担分担を確保するために、債権者の調整が果たす重要な役割を強調する。

重要・新興技術と重要インフラの促進と保護

11.技術革新がもたらす変革の機会に留意し、日本と米国の間および志を同じくするパートナーの間の両方において、重要・新興技術の共同研究開発プロジェクトを探求し、支援することにコミットする。

12.「日米グローバル・デジタル連結性パートナーシップ」を支援するために、30年までに5G市場におけるオープンRANの市場シェアを大幅に拡大するという野心に鑑み、特に第三国におけるワークショップ、セミナー、概念実証プロジェクトを通じて、安全でオープンな5Gネットワークをグローバルに展開するとともに、無線ネットワーク技術へのオープンRANベースのアプローチを含む次世代情報通信ネットワークのための安全な技術オプションを促進する取組を引き続き支援する。

13.「日米インターネットエコノミーに関する政策協力対話(インターネットエコノミー対話)」における進行中の取組を認識しつつ、デジタル政策課題に関する国際および多国間の場における調整を引き続き強化するとともに、パートナーとともに連携を推進し、安全で信頼できる海底ケーブルシステムにかかる戦略的に重要かつ相互互恵的なプロジェクトを促進及び支援する。

14.悪意のある者による重要・新興技術の誤用及び研究活動を通じた新興技術の不適切な移転に対応するために、マイクロ・エレクトロニクスおよびサイバー監視システムを含む重要・新興技術のより効果的でかつ機動的な輸出管理に関する日米協力を強化するための共同の取組を継続することを努める。

また大量破壊兵器およびその運搬手段を含む兵器の開発に使用され得る材料、技術、研究に関する輸出管理を強化するために、国際輸出管理レジーム、情報交換、協調されたアウトリーチを通じて、引き続き連携している。

15.重要インフラへの脅威に関する情報共有の重要性を確認する。

サプライチェーンの強靭性の強化

16.「日米商務・産業パートナーシップ(JUCIP)」およびその他の枠組みの下で、戦略的部門、特に半導体、電池、重要鉱物におけるサプライチェーンの強靱性を促進するための取り組みを前進させることを追求する。

この目的に向けて両国は

a.岸田首相とバイデン大統領が発表した次世代半導体の開発を模索する合同タスクフォースの進展を歓迎し、このメカニズムを通じた継続的な協力にコミットする。

b.日本企業が米国における電池製造への投資を増加させ、サプライチェーンの強靱性に貢献していること、また、志を同じくする国々の間の連携を主導するために、両国が強力なバッテリーサプライチェーンを構築することの重要性を認識する。

c.エネルギー安全保障を強化し、クリーンなエネルギー移行を支援するような、特に精製段階におけるボトルネックに対処するため、レアアースを含む、重要鉱物資源の多様で堅牢(けんろう)なサプライチェーンを構築するため、財政支援の提供を含む協力をすることの重要性を強調した。 

両国は6月14日にトロントにおいて発表された鉱物安全保障パートナーシップを通じて、他のパートナーと緊密に協力するつもりである。両国は民間セクターの関与の重要性を指摘する。

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