衆院選の勝敗ライン「与党で過半数」 岸田新総裁
自民党の新総裁に選ばれた岸田文雄氏は29日夕、党本部で記者会見に臨んだ。自らの掲げる経済政策、党人事や首相に選出された後の閣僚人事、次期衆院選の勝敗ラインなどについて質問に答えた。
新型コロナ対策「全てかけ必死に取り組む」
「日本はいま国難と言われる厳しい状況にある」と述べた。新型コロナウイルス対策に関し「全てをかけて必死に取り組まないといけない」と強調した。年内に数十兆円規模の経済対策を作成する方針を掲げ「国民に協力してもらえる雰囲気をつくる」と話した。
新しい資本主義を構築
経済政策について「新しい資本主義を構築する」と説明した。
「分配なくして次の成長がない、これも偉大な事実だ。いまこそ成長と分配の好循環を実現し、全国津々浦々に成長の果実を届けたい」と訴えた。「できるだけ幅広い国民の所得を引き上げる経済対策を打ちたい」と語った。
「成長の果実の分配が一部の人間にとどまっているのでは経済の好循環が実現できない。果実をできるだけ幅広いみなさんに享受してもらうこと大事だ」と力を込めた。
民間企業には「大企業、中小企業の間で適切に分配されているのか。経営者だけでなく、従業員に適切に分配されているか考えてもらう」と説いた。教育費、住居費への支援を強化する方針を示した。
「コロナ禍で苦労されている看護師、介護士らの方々の給料は仕事の大変さに比べて低いのではないか」と疑問を呈した。
こうした政策の財源に関しては「経済の成長を財源をとして使わないといけない」と話すにとどまった。給与の引き上げを通じて消費を喚起し、企業の設備投資や研究開発につながると唱えた。
丁寧で寛容な政治に支持いただいた
総裁選で勝利した要因について「国民の声を丁寧にしっかり聞く、丁寧で寛容な政治を進める主張に対し、多くの皆さんの支持をいただいた」と分析した。
「私の特技は人の話をよく聞くことだ」と改めて言及した。「できるだけ多くの国民の声を聞かせていただきながら、一つ一つ丁寧に答えを出していきたい」と語り「丁寧で寛容な政治を行い、国民に一体感を取り戻していきたい」と決意を示した。
党幹事長人事「これからしっかり調整」
人事の日程は「実際どれくらいかかるかやってみないと分からない」と述べ、具体的な言及を避けた。
党役員と新内閣の人事について「早急にたたき台を作り、しっかりと確認していきたい」と発言した。「できるだけ急ぎたいが明日1日はやはりかかるのではないか。これから作業を進める」と説明した。
幹事長を巡っては「大変重要な役職だ。いまこれからしっかり調整したい」と話した。「いま現在まだ具体的な名前が確定したわけではない」と強調した。
総裁の座を争った河野太郎、高市早苗、野田聖子の3氏の処遇に関し「一緒に政策論争するなかで素晴らしさを実感した。党内でその能力をしっかり発揮してもらえるようなことを考えたい」と言及した。
総裁選の中で掲げた幹事長以下の党役員の任期を「1期1年、3期まで」とする案への決意も示した。「自民党改革への思いは1ミリたりとも後退していない。しっかり行いたい」と言明した。
衆院選の勝敗ライン「与党で過半数」
次期衆院選の勝敗ラインは「与党で過半数だと思っている」と明言した。「政権選択選挙なので自公政権を選んでいただけるのか、野党政権を選ばれるのか、これを決める選挙だ」と語った。
10月21日の衆院議員の任期満了前に衆院解散に踏み切るかを問われ「政治状況をしっかり見極めたうえで首相としてしっかり判断していきたい」と述べた。
外交・安全保障は3つの覚悟
「民主主義をはじめとする基本的な価値観、日本の平和と安定(を守り抜き)、環境など地球規模の課題に貢献することで国際社会において存在感を示す(という)3つの覚悟を持って国益を守っていく」と訴えた。
政治の説明責任、しっかり取り組む
菅義偉政権の成果として、2050年に温暖化ガス排出量実質ゼロとする目標の表明やデジタル庁の発足、新型コロナウイルスのワクチン接種の加速――を挙げた。一方でコロナ対策を巡る説明を徹底すべきだったとの認識も示した。
「国民の声をしっかり聞くと掲げている。政治の説明責任にしっかり取り組んでいきたい」と答えた。
学校法人「森友学園」への国有地売却問題についても触れた。「行政で調査し報告書が出ている。民事裁判も続いている。その判断をしっかり見ていかなければいかない」と話すにとどめた。
「国民がそれでもいろんな意見、思いがあるとしたならば政治の立場で説明していかなければいけない」とも語った。公文書の管理を徹底し、再発防止に努めると力説した。
記者会見などの説明機会について「現実として首相の立場になれば全く時間制限なして対話を続けるのは難しい」と主張した。「できるだけ記者、国民との双方向のやりとりを大事にしたいが現実の政治日程のなか協力いただく」と話した。「やりとりもコンパクトに効率的にしたい」と指摘した。
