日中国交正常化50年 岸田首相「建設的関係を」
習氏「日本を重視」 両首脳が祝電交換
日中両国は29日、1972年の国交正常化から50年を迎えた。岸田文雄首相と習近平(シー・ジンピン)国家主席は祝電を交換した。日中間には沖縄県・尖閣諸島をはじめ懸案がある。首脳会談は2019年12月以来開かれておらず、対話の実現を探る。

首相は習氏にあてた祝電で「地域と世界の平和と繁栄のため、建設的かつ安定的な日中関係の構築を進めていきたい」と呼びかけた。現状に関しては「可能性と共に、数多くの課題や懸案にも直面している」と指摘した。
「50年前に両国の国交正常化を成し遂げた原点を思い直し、共に日中関係の新たな未来を切り開いていくことが重要だ」と強調した。
習氏は首相への祝電で「私は中日関係の発展を非常に重視している」と表明した。「国交正常化50周年を契機に、時代の潮流に従い、新しい時代の要求にふさわしい中日関係を構築するようけん引していきたい」と訴えた。
「中国政府と中国人民を代表し、また私個人の名義で、日本国政府と人民に謹んでご挨拶とお祝いを申し上げる」とも言明した。
首相は経団連などが都内で開いた記念行事に出席せず、林芳正外相が来賓としてあいさつした。孔鉉佑・駐日中国大使も参加した。中国側は中国人民対外友好協会などが北京の釣魚台国賓館で式典を開いた。
首相と習氏は21年10月の首相の就任時に電話で協議して以降、対話していない。日中両政府は国交50年を機に「建設的かつ安定的な関係」を構築する方針で一致しており、年内の首脳協議を模索する。
22年10月の共産党大会で習氏が権力基盤を固めた後、第三国で対面会談を開催する案がある。11月にはインドネシアで20カ国・地域(G20)首脳会議、タイでアジア太平洋経済協力会議(APEC)がある。

尖閣諸島の周辺では中国海警局の船による領海侵入が続く。8月には中国の弾道ミサイルが日本の排他的経済水域(EEZ)に初めて落下した。台湾有事への懸念も強まる。偶発的な衝突を回避するために首脳間の意思疎通が重要になる。
首相は9月22日のニューヨークでの記者会見で「中国との対話は常にオープンだ」と述べた。「具体的な対話の在り方について日中でしっかり考え、調整をしていきたい」と語った。
国交正常化の節目の対応は17年9月の45年の際、当時の安倍晋三首相と李克強首相が10年ぶりに祝電を交換した。安倍氏は在日中国大使館が都内で主催した行事に出席し、首脳の相互訪問を提案した。
19年には安倍氏が習氏を20年春に国賓として招く方針を表明した。日中関係の基盤を強化する機運が高まったが、新型コロナウイルスの感染拡大などの影響で国賓来日は見送りになった。
日中両国は1972年9月29日に当時の田中角栄首相と周恩来首相が日中共同声明に調印し、国交を正常化した。78年に平和友好条約を締結し、日本は政府開発援助(ODA)などを通じて中国の発展に貢献した。
中国は2010年に国内総生産(GDP)で日本を抜き世界第2位の経済大国となった。日本の最大の貿易相手国で、輸出額に占める中国の割合は20%を超える。
中国は経済発展と同時に軍事力も拡大し、アジアでの威圧的な態度が目立つようになった。南・東シナ海での海洋進出に加え、尖閣諸島周辺で領海侵入を常態化させた。
中国は「核心的利益」と位置づける台湾への軍事的圧力を高める。日本は米国などと協調して「台湾海峡の平和と安定の重要性」を訴えるものの、緊迫度は増す。
中国による現状変更の試みにどう対処するかが国際社会の課題になる。地理的に近く歴史的な関係も深い日本への米欧の期待は大きい。
【関連記事】
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。
この投稿は現在非表示に設定されています
(更新)