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RCEP、中国は車部品関税5兆円撤廃へ

日中韓や東南アジア諸国連合(ASEAN)など15カ国が参加する包括的経済連携(RCEP)協定が28日、国会承認された。2021年末にも発効する見通しだ。日本にとって中韓と結ぶ初めての経済連携協定(EPA)となる。アジアで広く事業展開する自動車産業など日本企業にとって貿易自由化の進展は追い風となる。

RCEPは20年11月に15カ国が署名した。ASEAN10カ国とほかの5カ国のそれぞれ過半が手続きを終えると60日後に発効する。参加国の国内総生産(GDP)と人口の合計は世界の3割を占める。全体として工業製品を中心に91%の品目で関税を段階的になくす。

日本から中国への輸出で関税がかからない工業製品の割合は今の8%から86%に、韓国向けでは19%が92%になる。中国は車部品の87%で関税をなくす。金額にすると5兆円程度だ。日本政府は部品や素材の輸出増で日本のGDPを2.7%押し上げると見込む。

中韓は合成繊維にかかる関税を下げる。圏内で広く繊維事業を手がける東レは、中長期でRCEPの活用を模索する。「商品ごとの関税撤廃の内容や時期を注視し、競争力向上へサプライチェーン(供給網)の再構築を検討する」という。

韓国は液晶保護フィルムの原料、酢酸セルロースの関税(標準税率5%)を即時なくす。世界大手のダイセルは「(韓国に供給している製品の現地での)価格競争力が高まり追い風だ」と話す。

恩恵は車産業にも及ぶ。各国の関税削減・撤廃品目には各種エンジン部品や電子部品、タイヤなどが並ぶ。「一日も早く発効してほしい」。日本自動車部品工業会の加納嘉男国際部長は話す。

同会加盟企業の海外法人の過半数、約1500社がRCEP圏に立地している。域内で広く関税が下がると、各法人は域外の競合メーカーに比べて優位に立てる。車の世界最大市場である中国などへの輸出ビジネスで商機をつかみやすくなる。

ただ、RCEPでは貿易自由化をうたいながらも、実際は各国が自国の競争力を意識して関税の撤廃時期を前後させている。中国は世界で覇権を握ろうとするEV関連では撤廃を遅らせている。

リチウムイオン電池の関税撤廃は発効から16年目、EVのモーターの一部にかかる10%もしくは12%の関税は16年目か21年目だ。電子部品が強い韓国は車用の電子部品の関税撤廃の時期を10年目以降に設定した。

中国は完成車の関税を再び引き上げないことも協定で約束。守らなければ紛争処理の手続きも用意された。だが中国が申し立てを受けた場合に応じるかは見通せない。

いち早く国内手続きを終えた中国はRCEPへの期待が大きい。中国商務省は3月下旬「22年1月の発効が参加国共通の目標だ」とあえて具体的な日程に触れた。前のめりに映るのはアジア太平洋地域で貿易秩序の主導権を狙うためだ。トランプ前政権の4年間で米国のアジアでの影響力が下がったとみて、中国主導の経済圏づくりを急ぐ。

RCEPに続き米国抜きのTPPへの参加も検討を始めた。日中韓自由貿易協定(FTA)にも意欲的だ。米国との対立が続くなか、周辺国との関係強化で孤立を避けたい意図も見え隠れする。バイデン米政権は中国に依存しない供給網づくりを主張する。日本企業は経済安全保障の観点でバランスを問われる。

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