原発、建て替え推進に転換 電力安定・脱炭素両立めざす
経済産業省は28日、今後の原子力政策の行動計画案を示した。「新たな安全メカニズムを組み込んだ次世代革新炉の開発・建設を進めていく」と明記した。廃止が決まった原子力発電所の建て替えを念頭に、電力の安定供給と脱炭素の両立をめざす。東日本大震災以降、新増設や建て替えを「想定していない」としてきた政策を転換する。

総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)の原子力小委員会で提示した。震災前より原発依存度を低減するという方針は維持する。与党とも調整し、政府のGX(グリーントランスフォーメーション)実行会議で年内に最終決定する。
建て替えは「(使用済み核燃料などの)バックエンド問題の進展も踏まえつつ具体化を進めていく」。新たな原発は従来と同様、原子炉を水で冷やす軽水炉で安全性を高めたタイプを想定する。万一の際も溶け出した核燃料が外部に漏れないよう原子炉容器の下に「コアキャッチャー」を備える炉などが念頭にある。
原子力の現場は技術者の退職が続き、部品などの供給網も細っている。政府が建て替え推進を打ち出し、電力会社の投資判断を後押しする。
行動計画案は既存原発の運転期間を延ばす方針も盛り込んだ。最長60年の骨格は維持しつつ、震災後の安全審査で停止していた期間を除き、実質60年超の運転を可能にする。23年の通常国会に関連法案の提出をめざす。
再稼働の推進に向けては国の職員で構成する「地域支援チーム(仮称)」をつくる。原子力災害に備えた地域の避難計画の策定や住民の理解を得る活動を手助けする。
研究開発の強化へ開発、設計から建設、運転まで指揮命令できる司令塔機能の確立も打ち出した。寿命を迎えた原発の廃炉を着実に進めるため、電力会社が国の認可法人に拠出金を払い、資金を確保する制度も設ける。

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