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原発先細り、打開探る 建て替えや運転延長にカジ

(更新)
この記事のポイント
・電力の安定供給と脱炭素両立へ、原発活用に再びカジ
・建て替えの候補地の1つは関西電力美浜原発との見方
・安全・資金・技術…課題山積、国の積極関与が不可欠

経済産業省が原子力発電所の建て替えや運転期間延長の案を示した。東日本大震災後、再稼働さえままならず、原子力は先細りの懸念が強まっていた。将来にわたる電力の安定供給と脱炭素の両立に向けて国として原発の活用に再びかじを切る。打開を探るには技術・資金両面での官民の役割分担、使用済み核燃料の扱いなど山積みの課題に一つ一つ向き合う必要がある。

政府は震災後、原発の新増設や建て替えを封印してきた。ここにきてウクライナ危機でエネルギーの供給不安に直面し、輸入依存度が高い化石燃料に依存するもろさを突きつけられた。

原子力の再拡大は一筋縄ではいかない。国内33基の原発がすべて現行ルールの特例で最大60年間運転すると仮定しても、2050年代には5基まで減る。

建て替え案の提示は袋小路の状況を打開する一歩になる。政府内では関西電力美浜原発(福井県)を候補地の一つとする見方がある。1~3号機のうち1、2号機は廃炉が決まり、3号機は稼働から40年を超えた。関電は「新増設や建て替えがおのずと必要になる」との立場で、震災前には1号機の後継について自主調査も始めていた。

問題は、原発の設計・建設には少なくとも10年前後の時間と5000億~1兆円の巨額の資金を必要とすることだ。投資を回収できるメドがなければ電力会社は動けない。震災を経て社会の環境も大きく変わった。

電力市場は自由化が進んで再生可能エネルギーのコストが次第に下がっており、原発に以前考えていたほどの価格競争力はない。経産省の計画案は「収入の安定につながる制度措置などの検討を進める」と盛り込んだ。電力会社を後押しする実効的な支援策を打ち出せるかが問われる。

安全確保が最重要課題であることも変わらない。経産省は現在の軽水炉と呼ぶ原発と同様、原子炉を水で冷やすタイプによる建て替えを想定している。三菱重工業は関電など電力会社4社と新たな安全対策を施した軽水炉を共同開発すると発表済み。官民で引き続き歩調を合わせて実用化を進める必要がある。

原子力規制委員会は新たな軽水炉に対応した規制基準を作る必要があるとみている。事業者の構想が明らかになってから1~2年かかるという。立地自治体の理解も欠かせない。

従来の軽水炉と異なる小型モジュール炉や高温ガス炉、高速炉といった原発はまだ技術開発の段階。建て替え以外のこうした「次世代革新炉」の開発・建設について今回の計画案は今後の状況をふまえて検討するとの表現にとどめた。

当面は運転期間の延長でしのぐため、運用を柔軟にする案を示した。震災後の安全審査や裁判所の命令などで停止していた期間の追加を認める。規制委による安全審査に合格していれば上限の60年を超えて運転できるようにする。

一時検討した上限自体の撤廃は慎重論が根強いことから、いったん見送った。再稼働済みの原発で延長できる期間はおおむね10年以下で、運転は最長70年程度までとみられる。結局、原子力の縮小という根本的な問題を先送りするにとどまる。

国際大学の橘川武郎副学長は「運転延長は電力会社が新たな原発を建設する意欲をそぐ。美浜原発で建て替えるといった具体的なプランを国が示し、国がリーダーシップを発揮して関電以外の電力会社も参画させるなどしないと建て替えは実現しないのではないか」と指摘する。

原子力への信頼の回復も欠かせない。増え続ける使用済み核燃料を再利用するための工場は稼働できていない。高レベル放射性廃棄物の処分場も決まっていない。建て替えの推進にはこうした難題を解決する道筋もあわせて示す必要がある。

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