核融合発電の実証「早期実現」めざす 政府が初の戦略案

核融合発電について議論する政府の有識者会議は28日、初の国家戦略の案をまとめた。実用化の前段階である「原型炉」での実証実験について「早期に実現する」と掲げた。
核融合発電は原子核同士を融合させてエネルギーを取り出す仕組みだ。化石燃料を燃やさないため、二酸化炭素が出ない。燃料となる重水素は海水中に豊富に存在する。環境への負荷もコストも低い次世代の発電方法とみられている。
政府内では従来、実証実験の時期を「21世紀中葉」と見込んでいた。有識者会議ではより具体的な目標を盛り込む案もあったが今回は示せなかった。政府は今春に最終的な戦略を決定し、国の科学技術政策を示す統合イノベーション戦略で打ち出す。
核融合発電は研究開発から事業化まで長い期間を要する。企業は長期的な投資計画を迫られる。政府は発電炉の部品を製造するスタートアップなども参入しやすいよう、国家戦略として後押しする方針だ。
案では「技術と市場のギャップを埋める支援」の必要性も記した。政府が民間向けの基金を創設し、研究の委託などで支援する意向だ。2023年度に官民の協議体を設置し、民間の要望を聞いて政策に反映する。
高市早苗科学技術相は28日の有識者会議で「官民が連携して戦略的に核融合を産業化し、イノベーションを加速できるよう有効的な取り組みを推進する」と述べた。
日本は国際プロジェクト「国際熱核融合実験炉(ITER)」に参加し、技術を蓄積してきた。米国は22年3月、商用発電に向けた10年戦略をつくると発表した。英国は21年10月に国家戦略を公表していた。
米国の核融合工業協会が22年7月に公表した調査結果によると、民間投資は21年の調査以降、28億ドル以上増加し、累計で47億ドルを超えた。