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賃上げ企業、入札で優遇 政府の物品調達や公共工事

政府は企業による賃金引き上げの実現に向けた対応を強化する。賃上げを表明した企業を2022年4月から政府調達で優遇する。先に決めた来年度の税制改正大綱には優遇税制の拡充を盛り込んだ。賃上げは企業収益の下押し要因になる。日本の労働生産性は国際的に低いままで、実効性を伴う政策に育つかどうかが問われる。

労働生産性の向上カギ

22年4月以降に契約する物品調達や公共工事の入札で、賃上げを表明した企業を優遇する。価格以外の要素も加味して評価する「総合評価落札方式」で、価格以外の評価点を5~10%程度引き上げる。実際の引き上げ幅は各省庁が判断する。この方式で実施する全ての調達が対象となる。

大企業で3%以上、中小企業で1.5%以上の賃上げを表明すれば加点する。前年度か前年の賃金と比較する。大企業は賞与も含む全従業員の平均給与額、中小は従業員の入れ替わりが激しいことから1人当たり平均額ではなく総額で見る。

企業は、会社と労働組合などの従業員代表が署名した賃上げ表明書を提出する。政府は企業が翌年に提出する税務書類をもとに賃上げが行われたかを確認。表明した賃上げ率に未達の場合は、その後1年間の入札で減点する。入札時の加点よりも減点幅は大きくなる。

22年度の税制改正には賃上げ企業の優遇税制の拡充を盛った。大企業向けは控除率を最大30%、中小企業向けは最大40%に引き上げる。現行は大企業は最大20%、中小向けは最大25%としている。

大企業は前年度から継続して雇っている人の給与をもとに判断。4%以上増えれば雇用者全体の給与総額を増やした分の25%を法人税額から差し引く。教育訓練費を20%以上増やした場合は5%分を積み増し、最大で30%とする。

中小は継続して雇っている人だけでなく、新規の雇用者も含めた全体の給与総額で判断する。前年度比で2.5%以上増やせば控除率が30%となる。教育訓練費を10%以上増やすと10%分積み増して最大40%となる。

大企業については、継続雇用者の給与総額を1%以上増やさない場合は、研究開発などの投資額の一部を法人税額から差し引く税額控除を適用しない措置も盛り込んだ。「アメとムチ」の対応で賃上げを促す。

岸田文雄首相は3%を超える賃上げに期待する。安倍晋三政権も3%の賃上げ目標を掲げたが、ピークは2015年の2.38%でその後は低下傾向にある。政府が賃上げを要請する「官製春闘」が実を結ぶかは不透明だ。

厚生労働省が集計する毎月勤労統計によると、90年に4.7%だった現金給与総額の伸び率はその後急速に低下し、00年以降は一度も1.5%を上回っていない。日本経済の自力である潜在成長率が0%台に低迷するなか、企業は固定費の拡大につながる賃上げに慎重な姿勢を崩さないできた。

本来は市場競争の結果、企業が自ら賃金を引き上げて従業員を確保するのが筋だ。日本の労働生産性は主要7カ国(G7)で最低の水準にある。成長戦略で生産性を高めない限り、賃上げ政策は画餅に終わりかねない。

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