APEC食料安保相会合、共同声明見送り ロシアも参加

日米中や台湾など21カ国・地域でつくるアジア太平洋経済協力会議(APEC)は26日、食料安全保障担当相会合をオンライン形式で開いた。会合にはロシアも参加した。世界的な食料危機の懸念を共有したが、参加国・地域の全会一致で決める共同声明は採択できなかった。
日本政府関係者によると、ロシアのウクライナ侵攻を巡り各国・地域の意見の隔たりが大きく、共同声明を採択できなかった。同会合で共同声明が採択できなかったのは初めて。APECでは5月の貿易相会合でも共同声明を取りまとめられなかった。
代わりに議長国を務めるタイが議長声明を公表した。食料供給網(サプライチェーン)の安定や食料安保の強化などを促進する取り組みの必要性を確認するにとどめた。ロシアのウクライナ侵攻についての記述はなかった。
日本からは野村哲郎農相が出席した。野村氏は、ウクライナ侵攻を続けるロシアを強く非難した。「各国・地域はそれぞれの資源を生かして農業の生産基盤を更に強化することが重要だ」と語った。ロシアからはパトルシェフ農相が出席した。
会合ではウクライナ危機の収束が見通せないなか、食料価格の高騰や飢餓に苦しむ国・地域が増えていることについて懸念の声が上がった。
食料安保強化に向けた2030年までの工程表の実施計画も策定した。工程表は昨年採択したもので、農業のデジタル化や生産性向上などを目指す。
世界有数の穀物の生産国であるウクライナやロシアからの輸出停滞が世界で食料危機を招く要因になっている。食料品の国際相場は今年3月に過去最高値を更新した。ロシアが封鎖していた黒海では8月に輸出が再開されたが、完全な回復までには時間がかかるとみられる。